ラジオ

2012.02.04
丹波春秋

 読者投稿欄「自由の声」で最近、NHKラジオ深夜便に関する投稿が2本寄せられた。私は一度も聞いたことがないが、丹波でも高齢者を中心に愛聴者が多いようだ。折しも丹波市ではコミュニティFMを開局する動きが進んでいる。ラジオは今ちょっとしたブームなのだろうか。▼ラジオについて考察した思想家、ピカートに『沈黙の世界』という著書がある。ピカートは、ラジオについて「騒音語を製造するための機械装置」と断じ、「ラジオは沈黙のあらゆる空間を占領した。沈黙はもはやまったく存在していない」と嘆いた。▼騒音語で満たされ、沈黙を失った社会では、言葉はその重みをなくしてしまう。それだけにはとどまらず、世の中に悪が広がる。騒音語の世界にいると、人間の精神は容易に滅亡するからだ。さらには人間を不安にし、神経質にする。ラジオがもたらす弊害をピカートは案じた。▼ピカートが同書を書いたのは1948年。ラジオがやり玉にあがったのは60年以上も前だからだ。もしピカートが生き返ったならば、ラジオよりも騒音語を製造するテレビやネットなどに失神してしまうかもしれない。▼ラジオの騒音は今日、他のメディアに比べて取るに足りない。ラジオが見直されている背景には、限界を超えた騒音社会があるのかも。(Y)

 

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