郷友

2012.02.18
丹波春秋

 「創刊号の目次に名をば連ねたる一人だに知らず百周年とぞ」。篠山出身者や在住者らでつくる「多紀郷友会」が、21年前に発行した会誌「郷友」に収録された1首だ。この歌を詠まれた篠山の歌人、醍醐志万子さんもすでにこの世にいない。「郷友」にどれほどの人がかかわったことか。そう思うと、創刊120年の歩みは長く、重い(本紙5面参照)。▼「郷友」には、篠山の歴史や自然など、読み応えのある原稿が掲載される。篠山の人物史について調べるとき、「郷友」のバックナンバーにお世話になった個人的な思い出もある。その文献的価値は多くが認めるところだ。▼多紀郷友会を立ち上げた中心人物は当時、東京法科大学で学んでいた学生だった。桂兼太郎という。若者らが集い、意見を発表し、親睦を深めようと誕生した。先の歌が収録された「百周年記念号」に、桂の思い出が記されている。▼「何分我々はいっさい束縛をしりぞけて青年の意気だけでやろうという行き方であったので、相談もせず勝手にやり、…ある点かなりうるさがられた」。明治時代の若者の気風が感じられる一文だ。▼醍醐さんの歌をもう1首。「青年の意気もてなせる言行の『うるさがられた』を読むがたのしさ」。その原点の通り、歳月を重ねても若々しい「郷友」であってほしい。(Y)

 

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