胸を張れる農業

2012.02.23
丹波春秋

 「農産物を阪神間に売りに行っていた父が身体を壊し、大阪で就職していた自分が代わりを務めた。お客さんから『あなたのお父さんはいつもこんな安心な野菜を届けてくれて、本当にえらい』とほめられ、その時初めて、Uターンして後を継ごうと決心した」。▼丹波市の若手農家で、第1回丹波農業グランプリを企画した小橋季敏さんが、閉会あいさつで話した。「子どもに夢を与え、地域を元気にする農業者」を顕彰する同コンテストには、最優秀賞の高見牧場をはじめ、多くのすばらしい企業、団体が登場し、興味深かった。▼高見進さんは元々は他業種から参入してふる里に戻り、高品質の「高見ブランド」肉の名を広く轟かせるまでになった。民間流通業者と組んでレストラン向けのベビーリーフの生産を伸ばす丹波野菜工房、高付加価値の柿を生産する桑村農園。いずれも、目の付け所と工夫、意欲次第で、至る所に潜んでいる宝を掘り出せる好事例だ。▼高度成長期、農家の父親は「田んぼはしんどいだけ」と、息子を都会に送り込んでいった。今、グランプリ実行委員長・婦木克則さんの息子さんは他の先進農家で修業中だが、正月休みに帰省した折、「お父さん、世界に胸を張れる農業にせんなんな」と力強く話したという。それが、地域が胸を張れることにつながると思う。(E)

 

関連記事