思春期から大人へ

2012.02.25
丹波春秋

 人から聞いた話だが、丹波地域の高校の卒業式で、PTA会長が祝辞で「あいさつや返事のできる人になってほしい」と呼びかけた。すると、保護者席から拍手が起きたそうだ。高校生の子を持つ親として、うなずける話だ。▼何を聞いても、「ふん」「別に」とそっけない返事で、会話が成り立たない。しかし、わが身の高校時代を振り返ってみると、似たようなものだった。友達は別にして、周囲の人に対する口数は極めて少なかった。拍手をした先の保護者も高校時代はどうだったか。▼なぜ高校時代は無口なのか。臨床心理学者の河合隼雄氏によると、思春期は「毛虫が蝶になる前のさなぎの状態。自身の中で大きな変革が起きる時期」であるとし、「思春期の子どもたちは、自分の内部で起こっている大変革がどんなことか、自分にもわからない。したがって、どうしても無口になるし、内に閉じこもる」と解説している。▼自身の内部変革を持て余し、内側に視線が向かざるを得ない思春期。周囲に対して無口になるのは、思春期を健全に過ごしているとも言える。やがて薄皮が1枚1枚はがれていくように成長すると、周囲に穏やかな視線を向け、口数も増えるのだろう。▼高校で卒業式が行われている。それは思春期から大人に成長していく節目でもある。(Y)

 

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