民芸

2012.03.03
丹波春秋

 「丹波の古陶は、私の見るところでは、最も日本らしき品、渋さの極みを語る品、貧しさの富を示す品と思われてならぬ」と、丹波焼をたたえたのは、民芸運動の指導者だった柳宗悦だ。その柳が収集した丹波焼などを公開する展示会「柳宗悦と丹波の古陶」が、丹波焼の地元今田町にある兵庫陶芸美術館で10日から始まる。▼民芸とは、「用に即した美」をたたえた工芸品のこと。実用から離れることなく、しかもそのうちにおのずから美を表わす工芸を、民芸という。名もなき職人が作り、民衆が普段の暮らしに使っている工芸品に美の世界を見いだした柳は、丹波焼を高く評価した。▼柳は昭和の初めごろから、篠山の美術商や所蔵家らから丹波焼の優品を買い求めた。柳による丹波焼の再発見が、丹波焼を広く世に知らしめるきっかけとなった。▼民芸の特色のひとつが地方性。自然から離れた都市部の職人は技巧に走りやすかったのに対して、地方の職人の多くは大地に根づき、自然に結ばれた本来の民芸の伝統を守り続けてきたという。▼展示会では、同じく柳が評価した丹波布も併せて展示される。今田では丹波焼、青垣では丹波布と、私たちの先人は地方にあって、自然と結びつきながら、民芸を生み出してきた。丹波に息づく豊かな文化土壌を思う。(Y)

 

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