祈り

2012.03.10
丹波春秋

 他人に祈られた心臓病患者と、そうでない患者とでは、症状に違いがあるかを調べる実験がアメリカの病院で行われた。すると、祈られた患者は人工呼吸器、抗生物質、透析の使用率が低いことがわかった。さらに驚くことに、西海岸にあるこの病院から遠く離れた東海岸側からの祈りにも効果があり、患者たちは祈られていることを知らなかった。▼分子生物学者の村上和雄氏、宗教学者の棚次正和氏の共著「人は何のために『祈る』のか」で紹介されている話だ。同書では、ほかにも祈りによる治癒効果の実例が紹介されている。▼距離をはるかに越えて祈りは届く。当事者が祈られていることを認識していなくても、祈りは通じる。これは何も治癒効果に限ったことではなかろう。東日本大震災被災地への祈りにもあてはまろう。▼「科学的ではない」と退けるのはたやすい。しかし、アインシュタインが「宗教のない科学は危険である」と言ったように、科学への盲信が原発の安全神話を生み出したのではなかったか。祈るという宗教的行為を再認識する必要がある。▼東日本大震災が起き、海外では「日本のために祈ろう」という声が広がったという。私たちも被災地のために祈りたい。祈り続けたい。祈りは、被災地のための行動も生み出す。祈りには力がある。(Y)

 

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