カーネーション

2012.04.05
丹波春秋

 朝ドラ「カーネーション」が終わって寂しい。最近では「ゲゲゲの女房」以上に楽しませてもらった。▼魅力の一番は、小原糸子を演じた主役の尾野真千子。仕事熱心で情に厚く、気風(きっぷ)の良い女の役を活き活きと演じた。それから何と言っても、通奏低音の如く登場する陰の主役、だんじり祭り。▼30年前に見物に行った際、その勇壮さもさることながら、そば屋で女子高校生たちがビールを飲んで気炎を上げているのにびっくり。と言っても可愛らしいものだったが、そば屋の主人も「今日は特別」と許しているようだった。岸和田の市民にとってはこの祭りはそれくらいの存在なのだろう。▼糸子の70歳代以後を演じた夏木マリも、3月いっぱい拝顔出来て満足。最近は舞台出演が多いせいか、初めのうちセリフがテレビ画面からはみ出す感じにとまどったが、だんだん馴染んできて、特に顔の表情だけの場面はさすがだった。▼最終回は「死んでから5年、でも私はちゃんとここにいます」というナレーションで始まる。念願だった自分の朝ドラのテレビを、看護師に導かれて病院の待合室で一人眺める車いすの老女。背中しか見せず、何の説明もなかったが、まぎれもなく夏木マリの糸子だ。連続テレビドラマとしては、秀逸なラストシーンだった。(E)

 

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