ゆとりのある社会

2012.04.28
丹波春秋

 ゴールデンウィークに入った。仕事から離れ、ゆっくりしている人が多かろう。つかの間のゆとりを満喫してもらいたいものだが、民族学者の調査によると、世界の数多くの未開社会は1年中、ゆとりに満ちた日々らしい。▼1日の労働時間はわずかに2―4時間。それだけ働けば、1日の食糧は確保できるからで、残りの時間はおしゃべりをしたり、昼寝をしたりと、ゆっくり過ごしているらしい。▼未開社会にとどまらず、古代ヨーロッパでは労働は奴隷のやることであり、れっきとした市民がやることではなかった。中世ヨーロッパでも、仕事にばかり励む人は、怠惰な人とみなされたという。仕事に懸命なあまり、神様に対する信仰をなおざりにすることは怠惰と考えられたからだ。勤勉が美徳とされるようになったのは、そう古いことではない。▼勤勉の国というイメージが強い日本でも、江戸の職人の労働時間は1日に6時間ほどで、金儲けのためにあくせく働く職人は、根性が曲がった奴とみられたという。貧しくても、楽しく1日を過ごすことが大事だった。言い換えれば、貧乏でも暮らせる社会があった(『江戸の智恵』から)。▼では、と思う。生活保護受給者が200万人に達するなど、貧困層が拡大した今の日本は、貧乏でも暮らせるゆとりのある社会なのか、と。(Y)

 

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