ハイキング

2012.05.02
丹波春秋

 新緑の武田尾渓谷を大学の仲間とハイク。西宮名塩の駅から旧道をしばらく行くと、JR福知山線の旧軌道跡に。武庫川の岸壁のはるか下を、大きな岩の間を縫って清流が滔々と流れている。対岸の山々には名残りの山桜。武田尾駅まで10キロ余りの間にトンネルが6つ。真っ暗闇を懐中電灯で照らしながら枕木を踏み踏み行く。▼子供の頃、煙をもくもくと吐く汽車で大阪まで3時間かかった。冷房など全くない夏、開けた窓をトンネルにさしかかるたびに閉めていると、汗と煤で真っ黒になった。「どじょう(道場)たけたか(武田尾)なまず(生瀬)はまだか」と母が教えてくれたのを思い出す。▼2時間ほどで、武田尾手前の「亦楽えきらく山荘」の周回コースに。「桜博士」の故・笹部新太郎が私財を投じて山桜など在来種の保護育成、研究のために作った演習林で、水上勉の「桜守」に登場する。今は「桜の園」として宝塚市が整備し、「桜守の会」というグループがボランティアの活動をしている。▼会員のN君は、さすが植物にくわしい。「桜の葉の付け根に点のようなものがついているだろう。これは蜜腺と言って、蟻に来てもらうためにある。美味しい葉に虫が寄ってくるのを、退治してくれるんだ」。なるほど、蟻は桜のナイトだったか。色々教わりながら目的地に着いた。(E)

 

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