赤川氏の投書

2012.06.07
丹波春秋

 先月の連休に赤川次郎の「三毛猫ホームズの推理」を読む。30年前の大ヒットシリーズ第1作だが、手にしたのは初めて。▼なぜ今頃、と言うと、大阪の高校の卒業式で「君が代」を歌う時、校長らが教師の口元を監視し、それを橋下市長が擁護したことについて、赤川が朝日新聞の投書欄に「醜悪だ」と批判する文を寄せたのが目にとまったからだ。売れっ子作家が稿料タダを承知で、一般読者に混じって投稿するなんて、余程のことだ。▼春秋子は橋下市長について、改革者としての優れた資質は認める一方、独裁的で短兵急過ぎる面には危うさを感じている。「君が代」は、国際試合でのサッカー選手たちを見るにつけ、生徒時代からきちんと指導してほしいとは思うが、教師の口元を監視するなどというのは、やはり陰湿だ。▼赤川の投書には、文楽を初めて見た橋下市長が「こんなもの二度と見ない」と言い放って補助金を削減したことへの、文楽ファンとしての憤りも込められている。この点も赤川に全く同感。▼以上はさておいて「三毛猫の推理」への感想。猫探偵は意表をつき、トリックも面白いが、どんでん返しはちょっとやり過ぎ。それに何人も簡単に殺されると、作品が軽くなる。多作の作家は敬遠しているのだが、でもまあ、また暇があれば、いま少し…。(E)

 

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