社会的ジレンマ

2012.06.30
丹波春秋

 猫にひどい目にあわされていたネズミたちがいた。ネズミたちは集まって相談。「猫が来たら、すぐに逃げられるよう、猫の首に鈴をつけよう」という名案が出た。では誰が猫に鈴をつけに行くのか。その役を買って出る者はいなかった。▼ご存知、イソップのお話だが、これは「社会的ジレンマ」という考えに通じるらしい。社会的ジレンマとは、「人々が自分の利益や都合だけを考えて行動すると、社会的に望ましくない状態が生まれるジレンマ」(山岸俊男氏著『社会的ジレンマ』)をいう。▼ネズミは、猫に鈴をつければ事態が改善するとわかっていながらも、わが身の安全という目前の利益を優先したため、事態は変わらず、悪いままだった。この社会的ジレンマの図式は環境問題にも当てはまる。▼電力を無駄に消費する暮らしは、環境にとって決して好ましくないことは理解している。しかし、エアコンは28度よりも低い方が快適だと、必要以上に温度を低くする。自分の快適さや便利さを求めた積み重ねが、環境問題をいっそう深刻化させた。▼この夏、計画停電が浮上した。もし実施されれば、各分野に影響を及ぼし、私たちの仕事や暮らしを直撃することは必至だ。そのことがわかっていても、必要以上の快適さを求めるか。節電に努めるしかない。(Y)

 

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