人としての品性

2012.07.07
丹波春秋

 本紙6面掲載の講演録で、兵庫県立大学の岡本久之教授が「今の日本経済に必要なのは、昭和恐慌から日本を脱出させた高橋是清蔵相のような政策だ」と語っている。積極財政を推進した高橋だが、女性に関しても積極的だった。▼文芸評論家、福田和也氏の『人間の器量』によると、「平気で妻と妾を同居させ、それでも足らず芸者を買っていた」とある。しかし、「この老爺が大蔵大臣をしているかぎり、景気は悪くならない、物が売れるし、給料は上がると市井の人は知っていた」。▼「財政のパイオニア」と言われた蔵相、松方正義も高橋に負けていなかった。生涯に57人の子どもをもうけたといわれる松方は、明治天皇に「子どもは幾人いるのか」と聞かれた際、即座に答えられず「のちに調べてから申し上げます」と応じた。▼政治家は能力があればよく、清廉潔白である必要はないと言っているのではない。人としての品性は当然、求められる。秦野章法務大臣の言葉「政治家に古典道徳の正直や清潔さなどを求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しい」は、ふてぶてしい開き直りだと思う。▼ただ福田氏が嘆いたように、「通り一遍の物差しでは測りがたいスケールを持った器量人」が少なくなったことは確かだ。現今の政治を見ていて、つくづくそう思う。(Y)

 

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