新聞の言葉遣い

2012.10.20
丹波春秋

 15日からの新聞週間を前に、作家の丸谷才一氏が亡くなった。数冊読んだ丸谷氏の著作の中で、もっとも記憶に残ったのは、「泣虫新聞」というエッセイだった。新聞業に携わる身でもあり、丸谷氏の指摘は身にこたえた。▼新聞の文体について丸谷氏は、「いちばん当惑するのは情緒の押しつけ」と非難する。たとえば「悲しみの一周忌」という見出し。一周忌はだいたい悲しいもので、喜びの一周忌はもともとあり得ない。▼「かういふ具合に、空疎なことを感傷的に記した、歌謡曲、ないしナニワブシの下手な真似が、日本の新聞の基本的な言葉づかひなのである」。流行語や決まり文句を使いたがったり、しゃれを駆使した見出しに悦に入ったりするのも日本の新聞の特徴で、「気品がない」と断じた。▼丸谷氏には『文章読本』という著作もあり、日本語について真剣に考えた作家だった。それだけに、新聞の言葉遣いに対する丸谷氏の指摘を、常に頭の隅に置いたつもりだが、どれだけ紙面に生かせたか。▼丸谷氏は、新聞は民度を反映するともいう。恐縮な話だが、丹波地域の地方紙である弊紙が丹波の民度を反映しているという設定をするならば、弊紙を制作している一人として、言葉遣いにもっと神経質にならなければと思う。新聞週間最後の日に改めて自戒する。(Y)

 

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