二つの人生

2013.05.18
丹波春秋

 大手銀行を辞め、篠山市の今田デイサービスセンターで今春から働き始めた51歳男性の記事が、12日付の弊紙「あんな話こんな話」に載っていた。早期退職制度の対象年齢になったため、以前から関心のあった福祉の道に飛び込んだそうだ。▼やりがいを持って仕事に励まれている様子が、記事から伝わってきた。取材をした記者に聞くと、「生き生きとされ、笑顔のすてきな人でした」とのこと。さわやかな転身に、萩本欽一氏と江川卓氏のやりとりを思い出した。▼江川氏が巨人のエースとして活躍していた当時、欽ちゃんに悩みを打ち明けた。遅かれ早かれ大好きな野球をやめ、違う仕事をしなければならない時が必ず来る。それが何よりも辛く、好きなお笑いの世界で死ぬまで頑張れる欽ちゃんがうらやましいと言う。▼そう打ち明けた江川氏に、欽ちゃんは「一つの仕事をきっちりやり遂げて、また違う世界に向かうってかっこいいじゃない。人生が二つあるようなものだから、僕は江川君がうらやましい」。江川氏は「あっ、そうか」とうなずき、「人生を二つ体験できるって思えばいいんだ」。悩みが消え、欽ちゃんに「ありがとう」と感謝した(萩本氏『ダメなときほど運はたまる』)。▼人生そのものは二度ない。しかし、人生を味わうのは一度だけとはかぎらない。(Y)

 

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