困難と生

2013.07.27
丹波春秋

 8月3日、丹波の森公苑で開かれるイベントで、全盲のチャレンジャーこと立木早絵さんがコンサートを行う。「24時間テレビ」でおなじみの女性で、これまでに津軽海峡横断リレー、トライアスロンに挑戦し、キリマンジャロ登頂も成し遂げた。▼人はなぜ苦痛を承知で困難に立ち向かうのか。それは、まったく苦痛のない環境に置かれた場合、人はどうなるのかを想像すればわかる。▼たとえば、リストラの対象者に厳しい仕事を与えてはならないという。厳しい仕事に音を上げるどころか、逆に奮起してしまうからだ。だから、まったく仕事を与えない方がいい。すると、すっかり無気力になり、退職を願い出る。苦痛のない環境は、生の意欲をそいでいくのだ。▼困難に挑む。それは多かれ少なかれ苦痛を強いるが、それこそ生の手応えである。生をまっとうしていることを実感できる。困難を克服した時は、生きてあることの喜びに満たされる。思想家でもある大杉栄は、「人は、みずからの偉大を感じなければならぬ、みずからの意志の崇高を自覚しなければならぬ、という本来の欲望がある」とした。みずからの偉大さ、崇高を自覚するため、困難に挑んでいく闘争本能を、人はもともと宿しているという。▼さて3日、立木さんは何を私たちに語りかけてくるだろうか。(Y)

 

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