環境と経済

2013.10.10
丹波春秋

 年中凍結していた北極海が温暖化で氷解し始めていることは、環境問題の大きな懸念材料となっているが、NHKの特集番組を観て驚いた。北極海航路が開通し、ロシア、日本のビジネス界が沸いているというのだ。▼日本からヨーロッパに向かうのに、従来のインド洋―スエズ運河ルートに比べて、こちらは3分の2の距離。夏場だけでも相当の経費減になる。氷が薄くなってもあちこちに難所は残るので、貨物船を先導する原子力砕氷船の会社がロシアで発足。日本の商社や船会社に商談を仕掛けている。この結果、昨年の運航実績は46隻。2年前の4隻から急増した。▼今はLNG(液化天然ガス)やナフサなど化学原料が中心だが、やがて一般貨物にも及ぶ可能性があり、苫小牧など北海道の港でも「欧州への玄関口」への期待が高まっているという。▼「温暖化も結構メリットがあるではないか」と言いそうな番組を観ながら、「しかし、待てよ」と考え込んだ。この話は次には「冬場も通そう」、つまり温暖化推進というところまで行きつくのでは。少なくとも温暖化阻止という、地球環境の喫緊の課題とは両立しない。▼人間社会の飽くなき経済志向には全く舌をまく。しかしアダム・スミスの頃のように、「見えざる手がやがて経済調和をもたらす」ことは、もはやあり得ないはず。(E)

 

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