久下村駅に善意の生け花 三原和美さん

2002.09.29
たんばのひと

 自宅近くの山南町のJR加古川線久下村駅に花を生けて、 15年近くになり、 乗降客の心をなごませている。 自宅玄関の生け花の延長という気持ちで、 夕方や朝早くなど人目を避けて続けた善意の花が殺風景な無人駅を飾っている。

 「夫が30数年勤務した国鉄を退職したことをきっかけに、 長年の恩返しをしたいと思い、 自分にできることはないかと思ったのが生け花でした。 昭和62年ごろから始めましたが、 最初は近所の人はおろか夫も知らなかったようです」
 「久下村駅は、 自宅にも近く、 私も良く利用した愛着のある駅。 夫にとっては、 一時勤務したことがあり、 加古川まで毎日通勤したことのある思い出の駅です。 国鉄からJRに変わるときに、 夫が退職しましたが、 まだ50歳代の前半でしたので、 今後のことを考えると私はショックでした。 そんな気持ちをやわらげる思いもあったのかもしれません」
 「四季折々の花などを山すその道で切ってきたり、 花屋さんで買ってきたりして生けています。 大体ひと月に四回くらい足を運びます。 夏は枯れやすいので、 月に5回は行くでしょうか。 はずかしさもあり、 人に見られないように、 こっそり続けていたのですが、 最近になって地元の人に知られるようになりました。 『生花は何流ですか』 と近所の人に訪ねられると、 『三原流ですよと』 冗談を飛ばせるようになりました。 自分がきれいと感じたら良いと思っています」
 「始めたころは、 自転車に花やバケツを積んで出かけていましたので雨の日は大変でした。 今は会社勤めの夫が休日や帰宅してから車で行ってくれるので助かります。 夫には大変感謝しています。 これからも、 体の続く限り駅に通いたい」

 加古川線の久下村駅は、 近くにあるパルプ会社の製品輸送で、 活気を帯びた時代もあったが、 現在は無人駅でひっそりとしたたたずまい。 それだけに駅舎の中に飾られた花の存在は大きく、 「長年夫がお世話になったお礼に」 というひたむきな気持ちが後押ししている。 夫婦協力して、 これからも善意の明るい愛の灯をともしてほしい。 山南町谷川一区、 63歳。 (M)

関連記事