ユネスコ・バンコク事務所職員 大安喜一さん

2003.06.01
たんばのひと

識字教育向上めざす
ユネスコ・バンコク事務所職員 大安喜一さん (タイ在住)
 
(おおやす・きいち)1960年 (昭和35年) 篠山市東浜谷生まれ。 篠山鳳鳴高校、 立命館大法学部卒。 84年旧文部省に入り、 京都大学職員、 国際日本文化研究センターを経て、 92年から文部省派遣ユネスコ職員、 96年から専任職員。
 
 タイの首都バンコクにあるユネスコ・バンコク事務所で、 アジア太平洋地域の識字教育を担当している。 ユネスコは国際連合教育科学文化機関。 バンコク事務所では、 今年度からスタートした国連識字の10年に沿って、 「万人のための教育」 を展開しており、 すべての人の識字習得をめざす。
 「世界のなかで、 大人と子ども合わせて約10億人が読み書きできない。 これは6人に1人の割合となっている。 そのうち、 約1億1300万人の子どもが学校へ行けない。 その半数はアジアにあり、 深刻な問題。 読み書きだけでなく、 問題解決や収入向上など生活面のレベルアップ、 コンピュータなどに識字教育を幅広く役立てたい」 と話す。
 「身近な所で学べる環境を整備するのが課題。 人づくりや教材づくり、 施設整備などを通じ、 各国の識字教育を支援する仕事をしている。 ブータンでは、 住民が総出による学校作りをしている。 仏教国のタイでは、 寺院が学習の場になっており、 図書室を設け、 青少年向けのインターネットも整えている。 このような途上国の識字教育を支援するユネスコ世界寺子屋運動を広める必要がある」という。
 「中国、 ネパール、 ラオスなどではコピー機よりも維持費が安い謄写版を使った教材づくりをしている。 インドを例にとると1人が寺子屋で1年間勉強するのに必要な費用は約5000円。 書き損じハガキ一枚 (45円) でノート1冊と鉛筆3本、 消しゴム一個が買える」 と支援を呼びかけた。
 「母国を離れて暮らし思ったことは、 豊かな日本に生まれたことへの感謝。 日本の支援活動もその気持ちが大切。 地域のコミュニティづくりなど日本人としてやれることは多い。 ソフト面の協力も求められる」 と話す。
 アジア各国の農村を訪れる機会も多い。 「なじみやすく、 田舎に育って良かった」 と話す。 最近、 ふるさと篠山市ユネスコ協会総会で講演した。 「高校時代の同級生が呼んでくれた。 ユネスコの運動に1人でも多くの人が関心を持ってもらえればうれしい」
(臼井 学)

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