揺らぐ病院-丹波地域の現状 2赤字

2006.06.15
丹波の地域医療特集

患者数減で急激に悪化
不採算部門担う「使命」

柏原、 柏原日赤、 篠山の三総合病院の経営は赤字だ。 徐々にふくらんだ赤字が、 篠山、 柏原日赤の存続問題に発展している。 柏原病院も、 独立採算を基本とする県の方針のもとにあり、 多額の赤字が存続を危うくしかねないとの懸念がある。
 昨年度の赤字は、 篠山病院が一億円強、 柏原日赤が三億一千万円、 柏原が六億九千万円の見込み。 累積赤字は、 篠山が六億三千万円超、 柏原日赤が六億七千万円、 柏原が四十四億円の見通し。 篠山病院は、 一九九七年に国から移譲を受けて以降、 一度も黒字を計上できずにいる。
 柏原日赤は、 九五年度を境に赤字に転落。 一時は十二億円あった貯金も、 一昨年底をついた。 柏原病院の四年前の赤字は、 四千三百万円。 経営悪化が著しい。

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 赤字の要因は複合的だ。 収益減の大きな要因になっているのが患者の減少。 医療費自己負担の増加、 高度な医療が受けられる都市部への流出、 病院の老朽化などに加え、 医師不足により、 患者が別の病院に移ったことも追い打ちをかけた。 柏原日赤は、 四月から外科を外来のみに縮小。 三月に延べ三百八十二人いた入院患者がゼロになった。 また、 ”人気”の医師が辞めたことも要因の一つという。
 柏原病院は、 診療報酬の改定に伴う入院期間の短縮で、 空きベッドが増えた。 四年前と昨年を比べると、 入院患者が二万六千人少なくなり、 収益は約二億円減少。 患者数が横ばいの篠山病院は、 リハビリテーション科で患者が増え、 他科の減をカバーしている。
 診療報酬改定で診療単価が下がったことも、 病院の収入減を招いた。
 収益が下がった一方、 支出の抑制は難しい。 診療で得た収益に占める人件費の割合が、 柏原病院、 柏原日赤ともに八割を超えている (共に昨年度)。 六〇%を超えると 「経営が厳しい」 と言われていることを考えれば、 両病院とも高い数字だ。

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  「赤字は全て経営努力不足」 と言えない面もある。 これら三病院は、 救急のほか、 小児、 産科といった、 「不採算部門」 を担っている。 柏原病院の多額の赤字も、 「民間では採算が合わず提供できないが、 必要な医療を提供する」 という公立病院の使命をまっとうした結果という一面もある。
 篠山、 丹波両市が、 篠山、 柏原日赤両病院の支援を検討しているのも、 両病院の必要性を認め、 撤退は地域医療の後退と考えているからにほかならない。 篠山市は、 「小児科」 「産科」 「救急」 を政策的医療と位置づけ、 補助金を設け、 篠山病院の経営を支援する方向だ。

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 来年九月、 「移譲後十年は病院を続ける」 という契約を満了する篠山病院。 篠山市は二〇〇一年から、 赤字について”応分の負担”を求める同病院との残留交渉に臨んできた。 市は、 今月中に負担できる範囲を明らかにする。 焦点は、 一九六九年に建てられ老朽化した病棟の建て替えだ。
 同病院は、 市が公金で病院という 「ハコ」 を建設し、 店子として運営にあたる 「公設化」 の確約を求めている。 「当面現状のままでの経営」 を希望する市と、 病院の主張は大きく隔たっている。
 同病院は、 新病棟が経営再建に不可欠と踏んでいる。 十分な支援が得られない場合は、 「撤退もある」 との姿勢を崩さない。 岩崎忠昭同病院長は、 市の決断を促す。 「今の病院は寿命が来ている。 病院が新しくなれば、 ランニングコストは黒字にできる」。
 一九七〇年に建設された柏原日赤も、 病棟建て替え問題を長年引きずってきた。 昨年、 「丹波市立丹波赤十字病院 (仮称)」 構想が急浮上。 市、 日赤、 県、 医師会らと三回の 「検討協議会」 をもったが、 四月以降協議は行われておらず、 構想は一時棚上げになっている。

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