法政大キャリアデザイン学部教授 佐貫浩 (さぬき・ひろし) さん

2006.11.02
たんばのひと

対話能力を育てたい 
法政大キャリアデザイン学部教授 佐貫浩 (さぬき・ひろし) さん (東京都在住)
 

1946年 (昭和21年) 篠山市生まれ。 篠山鳳鳴高、 東京大教育学部卒。 同大学院教育学研究科修了。

 いわゆる 『フリーター』 や 『ニート』 対策として、 厚生労働省が 「キャリアデザイン」 という考え方を取り入れた研修や教育を推奨している。 法政大学はいち早くそれに呼応した学部を創設。 「自己の能力を最大限に発揮し、 エンプロイアビリティ (雇用されうる能力) を高めるよう」 学生を指導している。 「私は教育学の立場から生涯学習という視点で、 対話を通じた自己形成をもう一度やり直すことに重点を置いています」。 自分の強みや弱みを再発見し、 自己PRにつなげるのだそうだ。
 今、 若者たちの間でコミュニケーション (対話) 能力が非常に低下していると憂える。 「自己表現がうまくできない。 孤立をおそれ、 同調することばかりに懸命で、 対話によって自分を作るということがないから、 突然切れたり、 引きこもったりして他者との関係を絶つという現象が増えています」。
 農家の次男として 「村から出て、 生きていける学力」 を意識しながら育ったという。   「大学受験で上京するとき、 完成したばかりの新幹線に乗りました。 科学技術への信頼感も大きかったですね」。 しかし、 そのうちすさまじい勢いで開発が自然の生態系を破壊し始め、 化学肥料で奇形魚が発生。 水俣病を初め公害問題が深刻に。
 時代の危機に敏感に反応して学生運動に関わるようになり、 仲間には非合法な暴力活動に走る者もいた。 「勿論、 自分たちの考え方が絶対とばかり手段を選ばないやり方は間違っています。 対話によって問題を一歩一歩解決していくことこそ民主主義」。
 日本の将来については悲観的な話が優勢になりがちだが、 「希望は一次産業にあると思う。 競争を強調しすぎず、 保護の政策も求められますね。 日本の豊かな自然と共生し、 暴力を用いないで問題解決をするコミュニケーション能力を養成していくこと。 その中から打開策が開けていくのでは」。

(上 高子)

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