燃料電池材料センター 平野敏幸 (ひらの・としゆき) さん

2006.12.10
たんばのひと

新エネルギーの最先端
物質・材料研究機構燃料電池材料センター 平野 敏幸 (ひらの としゆき) さん (茨城県つくば市在住)
 
1947年 (昭和22年) 篠山市坂本生まれ。 篠山鳳鳴高、 大阪大工学部卒業、 同大学院修士・博士課程修了。 金属材料技術研究所、 科学技術庁の研究員を経て2001年より現職。 筑波大大学院教授併任。 数理物質科学研究科・物質・材料工学専攻。
 
 地球温暖化防止への取り組みが求められる中、 新しいエネルギーとして期待される燃料電池の研究が各分野でなされている。 平野さんがグループリーダーを務める 「燃料改質材料グループ」 はその材料となる物質を作り出す研究をしている。
  「燃料電池は水素と酸素の化学反応で電気をつくるのですが、 水素製造用の触媒として、 私たちはニッケルとアルミニュームを3対1の割合で化合させ、 薄い箔を製造する技術を開発しました」 と、 包帯のような渦巻状の金属板を示して話す。 この箔は高熱に耐えるので、 高温化学機器の容器としても期待されるそうだ。
 日本の燃料電池の開発水準は世界でもトップレベルという。 自動車産業や家電メーカーでは一部製品化に成功しているが、 かなりの高コスト。 平野さんたちは、 さらに装置の小さい、 高効率で利便性のあるものをめざしている。 「企業の研究開発と違って、 すぐには結果を求められませんから、 自由に自分のアイデアを追い求められます」 という恵まれた環境だ。
 子どものころから親戚やまわりに教育関係者が多く、 将来は研究者になりたいと思っていた。 「研究には手作りの要素が大きいですから、 家の手伝いなどをして何でも自分で物を作ったことが今役に立っていますよ」。
 1981年から2年間、 米テネシー州の国立研究所に勤め、 また87年にはミネソタ大学で客員研究員となり、 「だめでもともと。 いろんなことをやってみよう」 というチャレンジ精神を学んだ。 現在はスタッフ8名の半分がアジアからの研究者だが、 「アジア全体のレベルアップが日本のプラスになる」 という気持で力を合わせて研究に取り組んでいる。
 帰郷するとき 「福知山線の広野を過ぎると急に風景が変わりますね。 ほっとする瞬間です」。

(上 高子)

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