篠山鳳鳴高校の創立130周年記念式に出席した際、旧藩主青山家代々の蔵書を収めた記念文庫を見学した。

2006.12.19
丹波春秋

篠山鳳鳴高校の創立130周年記念式に出席した際、旧藩主青山家代々の蔵書を収めた記念文庫を見学した。上田洋行前校長の尽力で収蔵庫が校内に整備され、展示できるようになったもの。漢書、歴史書、歌集等々、一万冊を超える書籍の数に圧倒された。▼大きな箱に入った源氏物語を初め、日本書紀、古事記伝、資治通鑑、等々々々。名前だけは教科書で覚えのある大著ばかりだが、恥ずかしながら内容はどれひとつ、ろくに知らない。▼中に、浮世絵が載った冊子を見つけ、眺めていると、上田さんが「『偐(にせ)紫田舎源氏』。当時の言わば『週刊誌』です」と説明。時々はこうした本で息抜きしていたのだろうか。「今は色々な本が氾濫して、古典に親しむ時間など取れないが、昔は古典しかなかったので、藩主たちもじっくり勉強できたんだ」と自分を慰めても、言い訳にしかならない。▼記念講演で卒業生の長島徹・帝人社長が「篠山小で『公明正大』の『公』組に入ったのがきっかけで、このことをいつも心がけてきた」と話された。全国でも珍しい、漢語からとった学級名が同小に今なお続いているのも、やはり青山藩の名残だろう。▼そうした気風が篠山から数々の逸材を送り出すことにつながったとすれば、藩の『遺業』はまことに大きなものだったなあと、改めて脱帽した。(E)

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