「1秒間に0.3人が飢えによって命を落としている」。

2006.12.27
丹波春秋

「1秒間に0.3人が飢えによって命を落としている」。以前、話題になった本「1秒の世界」からの引用だ。同書によると、1時間に世界中で1000人が餓死しているという。▼飽食の国民にとって想像もつかない数字だが、日本でもかつて餓死者は多くいた。「日本書紀」には、飢えのあまり人が人を食べることが記され、平安時代末期の飢饉では京都市中で4万2000人もの死者が出たという。江戸時代にも天明や天保の飢饉があった。日本人が総じて食に困らなくなったのは、長い歴史の上から言えば、まだ最近のことだ。▼そうした事実を基に「日本は世界に冠たる貧乏性の遺伝子」と、料理研究家の坂本廣子さんが先ごろの消費者のつどいで講演していた。「粗食に耐えられる人だけが生き残った」のだという。▼人間は本来、飢えと共存してきた。野生動物は、飢えという命の危機と隣り合わせで生きているように、動物の一種である人間もその宿命を背負っていた。人間の生理機構はそうした状況に順応し、長い時間をかけて形成された。▼なのに、今の日本人の多くは生理機構にそむく食生活をむさぼっている。体にひずみが生じるのは当然のこと。食に貪欲で、そのため病気の不安におびえる。「ベストセラーのナンバーワンは料理の本。ナンバーツーは減量の本」とは、けだし名言だ。(Y)

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