野田首相が柏原病院を視察 「守る会」らと懇談 4月7日

2012.04.12
丹波の地域医療特集

 野田佳彦首相が4月7日、 県立柏原病院 (足立確郎院長) を視察した。 社会保障と税の一体改革を進める中で、 地域医療の在り方について関係者と意見交換するのが目的。 同病院が小児科医不足に直面した際に、 地域の母親らが立ち上げた、 開業医と病院を使い分けることで勤務医の負担軽減に努めようと活動する 「県立柏原病院の小児科を守る会」 の活動の様子を聞き、 「地域医療を守ろうと、 提供する側と受ける側が一体的に取り組んでいる先進的な地域。 医療サービスを受ける側の高い問題意識があった。 一体改革の議論の最中であり、 大変参考になった」 と述べた。

 意見交換には、 「守る会」 の丹生裕子代表、 井戸敏三県知事、 柏原病院に多くの医師を派遣している神戸大学医学部附属病院の杉村和朗病院長、 足立院長、 辻重五郎丹波市長、 田中潔市医師会長、 水岡俊一総理大臣補佐官 (参議院議員) が出席した。

 野田首相のあいさつに続き、 井戸知事が県の医療提供体制、 足立院長が同病院の状況、 丹生代表が同会の取り組みをそれぞれ報告した。

  「意見交換のようすを参考にしたい」 との首相の意向で、 首相は質問せず、 司会の大野伯和同病院副院長が出席者に投げかけた、 「県立柏原病院の今後の診療機能回復にどのように取り組むか」 「今後どのような診療機能の充実が必要で、 どんな方策をとっていくか」 の2点の議論を聞きとり、 時折ペンを走らせた。

 会で取り組んでいる、 医療者に感謝の思いを伝える 「ありがとうメッセージ」 を説明する丹生代表から、 「総理も、 かかりつけのお医者さんなど、 普段お世話になっている方にカードを書かれてはいかがでしょう」 と水を向けられると、 表情を崩し、 笑みを浮かべる一幕もあった。

 意見交換終了後、 色紙に 「素志貫徹」 と揮ごうし、 参加者と記念写真に収まった。

 初めて 「守る会」 の取り組みを聞いた杉村病院長は、 「感動を受ける話で、 非常に分かりやすい説明だった。 他の領域にこれを広げていけたら」 と話していた。

 野田首相は懇談に先立ち、 足立院長の案内で、 同病院の小児科病棟を見学した。

 

【野田首相講評】住民が問題意識持つと変わる

 杉村先生が言われたとおり、 地域が元気でないといけない。 国も厳しいが、 地方に対する配慮を常に行うことが、 医療を取り巻く質の環境整備と思っている。

 どうしても予算の制約がある。 なるべく社会保障に充てようとしているが、 その分、 科学技術は伸びない、 教育は伸びないという中で、 足を引っ張る事態がでてきている。 社会保障の必要なところにお金をあてるためには、 安定財源を確保しながらやっていくということをやらないと、 トータルで変わらないのでは。

 志をもった医療を供給しようとする人たちと、 問題意識を持ってこの問題を解決しようとする、 サービスを受ける側の協働作業が必要だとずっと思っている。 根本的には政治が変えないといけないのは分かるが、 コンビニ受診を改めていこうということは、 本当に素晴らしいことだと思うし、 住民が問題意識持っていると、 変わることがいっぱいあると思う。

 自分の些細な経験だが、 長男が幼児の頃、 のどにアメを詰めた。 何も知らなかったら、 病院にかけつけたり、 医者にいったり救急車を呼んだりだったろう。

 たまたま直前に、 本で対処法を読んでいて、 その通りにするとアメが出た。 些細なことだが、 自分たちで一定の知識を持って、 子育てに対応していく。

 かかりつけ、 大きな病院にかかる、 という整理が親の側にできる環境整備が必要なんだろうと思ったし、 その問題意識を持っている人がこの地域にたくさんいらっしゃることは、 尊敬する。

【丹生代表手記】みなさんの励ましになれば

 3月初旬に、 官邸から 「政府の人間をそちらに連れて行きたい」 と連絡がありました。 後に、 総理大臣だと分かり、 大変驚きました。

 国会の都合で延期もあると言われ、 詳細が分かったのは1週間ほど前。 井戸知事の県の医療事情の説明の後、 足立院長と私がそれぞれ8分ずつ、 取り組みを説明するよう言われました。

 当日、 総理の到着が15分遅れ、 発表時間が5分に短縮されました。 毎週病院に手作りの軽食を差し入れている 「たんば医療支え隊」 など、 他の住民グループの活動を総理にお伝えしようと思っていましたが、 割愛しなくてはいけなかったのが心残りです。

 国に何を望むか、 と尋ねられたら答えることを事前に2つ考えていました。 1つは、 大学など医師教育機関への予算の増額。 もう1つは、 少しでも知識をつけ、 自分の体を自分で守れるよう、 小中学校の教育に 「医学」 を取り入れられないかと提案すること。 話の展開上、 後者は伝える機会がありませんでした。

 現場で頑張っておられる神戸大学病院の杉村病院長、 足立院長、 辻市長、 田中医師会長らが、 直接総理に声を届ける機会を持つことができ、 本当に良かったと思っています。

 丹波の地域医療を守る取り組みをお伝えすることができ、 「今後の参考にしたい」 とおっしゃっていただき、 うれしく思いました。

 この丹波訪問が、 全国で地域医療を守り支えようと頑張っておられる医療者のみなさま、 行政のみなさま、 そして住民のみなさまの励ましになることを願っています。

 

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