丹波布に魅せられ歩んだ60年 本出版と記念展覧会 伝統技術守る足立康子さん

2012.10.14
ニュース丹波市

写真・丹波布の伝統技術を守り続ける足立康子さん=丹波市青垣町佐治で

  「国の記録作成等を講ずべき無形文化財」 に指定されている丹波布の伝統技術を守る足立康子さん (86) =丹波市青垣町佐治=の87歳の誕生日を記念し10月20日、 本が出版される。 同日から出版記念の展覧会も開催される。 丹波布の織り、 染めの技を58年間、 守り続け、 多くの弟子を育ててきた足立さん。 「多くの人に支えられ、 丹波布とともに歩んでこられた。 本の出版はありがたいこと。 伝統技術を見直すきっかけになれば」 と話している。

 

 タイトルは、 「丹波布に魅せられたひと 足立康子さん」 (北星社刊、  1800円)。 親交のある歴史民俗誌 「sala」 編集者で、 加古川市在住の吉田ふみゑさんが、 足立さんへのインタビューを重ねてまとめた。

 丹波布は、 昭和初期に民芸家の柳宗悦氏が京都の東寺の朝市で見いだし、 工芸研究家の上村六郎氏が、 佐治村 (当時) で織られていた佐治木綿と特定。 地元の有識者が集まり、 1955年、 丹波布復興協会が発足。 本格的な復興が始まった。

 足立さんは、 50年に西宮市から佐治に嫁ぎ、 蔵に眠る天保6年 (1835) の丹波布の縞帳を見つけた。 当時すたれていた丹波布に魅せられ、 機織りや糸紡ぎをしてきたおばあさんの話を聞きながら、 復興を夢見た。 義母の足立たかさんが復興協会のメンバーでもあり、 協会と一緒に復興に尽くした。 同協会はその後、 丹波布技術保存協会に改称。 東京の全国民芸展にも出品され、 注目された。

  「機織りをやめた人も、 機械や道具を処分せずに残してもらっていたことが幸いした。 捨てられていたら、 伝えられなかったかもしれない」 と足立さん。 各分野で技術革新が進むなか、 糸紡ぎ、 織り、 染めとすべて手仕事にこだわった丹波布のファンは全国各地に広がった。

  「手仕事と手織りの面白さ、 楽しさ、 草木染めの不思議な色に魅せられて今日まで続けられた。若い人が伝統を受け継いでくれているのはうれしい」と話し、今も機織りに励む毎日だ。

 柏原町で24日、 丹波布技術者協会のメンバーら丹波布にかかわりのある人たちが集まり、 出版を祝う会を開く。 祝う会準備会の世話役の一人で、 同協会員の安達佳代さん (39) =氷上町賀茂=は、「丹波布に対する足立先生の熱い思いなどが活字になって残されることは素晴らしい。 丹波布のファンの人にぜひ読んでほしい」 と話している。

関連記事