イヌザクラの巨樹見つかる 多紀連山「西ヶ嶽」の谷筋で

2015.05.14
ニュース丹波篠山市自然

多紀連山の西ヶ嶽山中で見つかったイヌザクラの巨樹(写真提供:樋口清一さん)

多紀連山を形成する主要3峰の一つ 「西ヶ嶽」 (標高727メートル) の山中で、 「イヌザクラ」 の巨樹が見つかった。 幹周りが胸の高さの位置で4・35メートル、 樹高は約20メートル。 「ひょうごの巨樹・巨木100選」 の著者、 橋本光政さん (72) =姫路市=は、 「イヌザクラは、 県内はもとより、 全国的にも自生数の少ない木。 これまで県内一の大きさとされてきた神崎郡のイヌザクラ (幹周り2・78メートル) をはるかに上回っている」 と驚いている。

発見者は、 2008年に同山中で国内最大級のクリンソウ群生地を発見し、 保護活動を展開している 「多紀連山のクリンソウを守る会」 (樋口清一会長) のメンバー。

根元から約2・5メートルのところで十数本に枝分かれし、 それぞれの枝の直径は10数センチから30センチほど。 樹勢は旺盛という。 発見場所は標高約550メートルの谷筋で、 この付近では4年前にも 「守る会」 が、 トチノキの巨樹を見つけている。

イヌザクラは、 バラ科の落葉高木でサクラの仲間。 国内では、 山形県・青森県以南に分布する。 里周辺で普通に見られるウワミズザクラと近縁種で、 白い小さな花がブラシ状に集まって咲く花の付き方がよく似ている。 名前の由来には諸説がある。 そのうちの一つは、 ウワミズザクラに似ているが異なることから、 「似て非なるもの」 の 「非・否 (イナ)」 から 「イヌ」 に転じたという。

鳥取や山口、 長崎、 佐賀県などでは絶滅危惧種に指定されている。 樋口会長らの調べによると、 篠山市内で、 自生のイヌザクラは、 川原集落の山中で1本 (幹周り約80) 見つかっているだけという。 丹波市では自生の記録はない。

昨年秋、 「守る会」 のメンバー5、 6人が、 さらなるクリンソウの群生地を探し求めて山中を歩いていたところ、 イヌザクラの巨樹を発見。 そのときは、 イヌザクラかウワミズザクラなのかを判別できなかったため、 「来年、 花の咲くころにもう一度来よう」 とその場を後にした。

今月2日、 「守る会」 の樋口会長をはじめ、 石田莞爾さん、 細見隆夫さん、 酒井康夫さん、 津田博利さんの5人で再調査。 花はまだつぼみの状態だったが、 「イヌザクラは花だけが独立した枝に咲くが、 ウワミズザクラは花の下部に葉が付く」 ことから、 イヌザクラと判断。 8日には橋本さんも現地に出向き、 イヌザクラと判定した。

樋口会長は、 「宍粟市にあった株元幹周り約2・5メートルのイヌザクラの樹齢は約500年だったと聞く。 今回発見したものは、 それから計算すると1000年近くあっても不思議ではない」 と言い、 「これまでにもコブシやトチノキなど、 この地では珍しい木や巨樹を発見してきたが、 探せばまだまだお宝が見つかりそう。 篠山の自然は奥深い」 と話している。

東京・調布市にあるイヌザクラが国内で最も大きく、 幹周りは9・9メートル。

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