二宮尊徳研究家 鴻谷正博さん

2015.05.21
たんばのひと

海外に尊徳思想普及

(こうたに まさひろ)横浜市在住

 1949年 (昭和24) 丹波市青垣町佐治生まれ。 柏原高校、 早稲田大学法学部卒。 神奈川県庁に入り、 ロンドン駐在員、 課長、 参事を経て、 知事室長 (局長級) を最後に退職。 参議院議員松沢成文事務所顧問、 岡倉天心市民研究会世話人などとしても活躍。

 郷里の偉人で二宮尊徳研究の権威、 佐々井信太郎 (旧葛野村出身) の子息、 典比古氏と20歳代の時に知り合ったのが尊徳を研究するきっかけになった。 「典比古氏の自宅に月1回10人ほどが集まり、 勉強会を開き、 尊徳思想について勉強した。 最初は、 信太郎が自分と同じ郷里 (当時の氷上郡) の出身とは知らなかったので、 分かった時には驚いた」 と話す。

 長洲一二知事の時代に県庁へ。 当時は東京、 大阪、 京都と革新知事の台頭時代。 神奈川も同じ。 「当時は、 地方から国を変えようという意識が高く、 地方行政が面白いと思った」 と就職の動機を語る。  3年間ロンドンに駐在。 「東西ドイツの統合など激動のヨーロッパを体験。 二度と戦争を繰り返さないというヨーロッパの決意のようなものを感じた」。

 その後、 側近として仕えた当時の松沢成文知事が二宮尊徳に造詣が深く、 知事と2人で 「二宮尊徳の遺訓」 (ぎょうせい刊) を出版した。

 ブラジル移民100周年の事業では、 松沢知事の命を受け、 二宮金次郎 (尊徳) 像をブラジルに建てる支援プロジェクトを主導し、 団長として訪伯。 日系人から大歓迎を受けた。

 海外の尊徳研究者とも縁を結び、 「国際二宮尊徳思想学会」 に情熱を注ぐ。「尊徳思想は経済と道徳の融合論で、 日本の発展に欠かせない思想。 モラルを重視しつつ経済も伸ばした。 海外でも評価が高い。 中国では、 儒教精神と重なるが、 最近、 格差の増大、 政権幹部の汚職などのひずみが出てきたこともあり、 尊徳思想に光を当てる研究が進んでいる」 という。

  「母の顔を見に故郷に帰る時、 福知山線に乗るとほっとする。 車窓の風景に癒やされますね」 と優しい表情を見せた。

 

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