丹波柏原内に残る「浮彫」(レリーフ)

2018.02.15
中井一統特集

 中井権次一統の寺社の彫り物のうち,八代目中井権次橘正胤(1854―1928)が、晩年に近づいた頃、柏原町内の由緒ある所に浮彫をしつらえている。

◆その1
 柏原町石田の山口さん(わら家)。15代続く昔からのお菓子屋さんだが、正胤の弟・辰吉がここに婿入りしたときに、正胤が持たせたものである。立派な欅の衝立裏表に浮彫がされている。表は上賀茂神社の流鏑馬図で二頭の馬が今まさに駆け出す刹那を遺憾なく表現している。下には三匹の鯉が泳いでいる。裏は大きな孔雀が一羽と牡丹の図だ。

◆その2
 柏原町見長の松田信三さん宅の玄関に欅の素材に笛吹き童子と牛の図がある。それぞれ、正胤69翁と72翁の銘がある。亡くなる74歳前、彼は年齢をたびたび記しているようだ。

  

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「中井一統の技」掲載最後の言葉

 2013年9月8日から丹波新聞に掲載されるようになってから、早いもので丸4年が経ちました。友人二人と共に、但馬の応挙寺から始めた素人の探訪記でした。今までほとんど知られていなかった柏原の中井権次一統の寺社の装飾彫刻が丹波新聞紙上に初めて登場した時は、読者の皆様もさぞびっくりされたことでしょう。私たちも中井権次一統の卓越した技巧に魅せられ続きでした。
 私の拙い探訪記を最後までお読みくださって、これ以上の喜びはありません。
 これまでの探訪記を、カラー刷りにして一冊の本にまとめてはどうかとのご教示を広く皆様からいただきました。関係者の皆様ともよく相談して、前向きに考えたいと思っています。その節には何とぞご協力のほどお願い申し上げます。
(中井権次研究家 岸名経夫)

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