芦生の森へ

2018.03.08
未―コラム記者ノート

 いまから思えば、考え込んでもどうしようもないことを頭の中で繰り返していたら円形脱毛症になり、続いて帯状疱疹を発症した。気分転換に、と冬の間眠っていたバイクにまたがり、気が滅入ったとき、いつもなぜだか行きたくなる京都・美山町の「芦生の森」へと走らせた。

 天気は晴れ、気温もまずまず。となればこの時期、もれなくついてくるのがスギ花粉だ。道中、何度もくしゃみを繰り返し、ヘルメット内側の口のあたりがべとべとになった頃、ようやく目的地に到着した。

 澄み切った雪解け水が勢いよく流れる由良川の川べりにどっかりと腰を下ろし、登山用のガスバーナーで湯を沸かしてラーメンやコーヒーをすすった。目の前には、ぷっくりと大きく膨らんだ冬芽をつけたサワグルミが林立し、ところどころに見られる残雪と相まって、その景色はポストカードのよう。時折「ビッビッ」と鳴きながらカワガラスが横切る。何度払っても体にまとわりついてくる十数匹のカワゲラ(昆虫)には閉口した。そんな春への胎動を感じていると、ふっと気持ちが軽くなった。(太治庄三)

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