消えそうな史実

2018.05.10
未―コラム記者ノート

 篠山市小田中自治会(53戸)が、同集落に伝わる伝統行事、暮らしの様子などを次世代に残そうと、「『小田中』今昔ガイドブック」を作成した=5月3日号篠山版=。その中でも村の長老から聞き取った、昭和初期の記録「小田中よもやま話」が興味深かった。

 「日露戦争の日本海開戦で勝利した記念日(5月27日)には、部落対抗で走りの競技会があった」「終戦となり、平穏な日常を取り戻したうれしさで、村をあげて夜が更けるのを忘れるくらい踊り明かした」「稲荷神社の秋祭りに盛大に相撲大会が奉納された。近隣地区の相撲好きの若者達が好勝負を披露し、大勢の見物客を沸かせた」「演芸会の余興も各地区でおおはやり。青年が中心となり芝居や漫才に熱心に取り組み、優秀な選抜チームは篠山で行われた演芸大会に出演した」

 戦争の傷跡が残り、物が十分になかった時代に、それでも明るく、たくましく生きる人々の暮らしが思い浮かぶ貴重な史実が刻まれている。

 高齢化社会―。どの村にも、まだ活字になっていない、消えてしまいそうな史実がある。
(芦田安生)

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