ニッポン

2018.06.24
丹波春秋未―コラム

 「ニホン」か「ニッポン」か。日本の呼称をめぐって佐藤栄作内閣時代の昭和45年、閣議で侃々諤々の議論が交わされたらしい。議論の末、佐藤首相は「ニッポン」に軍配をあげた。しかし、鶴の一声とはいかなかった。

 日本酒、日本画など、ニホンでないとおさまらない言葉がいくつもある。かくして二つの呼称が併存したままなのだが、サッカー・ワールドカップでわき立つ今は、ニッポンが優勢になっているようだ。日本を応援するとき、「ニホン」ではしまりがない。「ニッポン」の方が切れがよく、勢いがある。

 「ニッポン」と声に出すとき、ニホンよりも自然と高い声になるのも関係しているだろう。低い声には落ち着きがあるのに対して、高い声は人を興奮させる作用がある。スポーツ観戦は高い声で応援した方が熱狂的になれる。

 戦時中の日本では、ニッポンが幅を利かせた。ときの首相、東條英機は演説で満身の力を込めて「ダイニッポンテイコク」と言った。その方が人を興奮させると心得ていたのかもしれない。そう言えば、北朝鮮の国営放送のアナウンサーも声が高い。

 ワールドカップの間は、サッカーの醍醐味を楽しむため「ニッポン」と言おうかと思っている。でも、高い声はときに冷静さを失わせることだけは忘れずにいようと思う。(Y)

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