「処暑」に秋の虫

2018.08.26
未―コラム記者ノート

 日本人は古くから、1年を24等分した「二十四節気」を引用し、季節の移ろいの目安にしてきた。中国からもたらされた暦の一種で、先人たちは、これを用いて花鳥風月を愛で、季節と共にある生活を楽しんできた。さらに細分化した「七十二候」もあるとか。しかし、そんな風情に浸る余裕がなかった今年の夏。篠山市消防本部によると、昨年7月の最高気温は33・1度、8月は34・2度だったが、今年は両月共に36・6度を記録。さらに猛暑日が連続したことも手伝い、この上ない厳しい夏となった。

 このコラムを書いているきょうは、二十四節気でいう「処暑」だ。暑さがおさまる時期ということになるのだが、扇風機の生ぬるい風を浴びながら執筆している私の口からは、「暑い」「あーしんど」の言葉しか出てこない。

 それでもこの日の夜、夢うつつの中で、庭先から「チンチンチン…」と鉦を叩くような音が聞こえてきた。数ある秋の虫の先陣を切って鳴き始める「カネタタキ」だ。体長1㌢ほどの小さな虫が、ささやかな季節のめぐりを知らせてくれ、なんだか気持ちがほっとした。(太治庄三)

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