岩合光昭とネコ

2018.08.30
丹波春秋

 丹波市立植野記念美術館で開催中(9月9日まで)の岩合光昭さんの「世界ネコ歩き写真展」が好評で、岩合さんの講演にはセミナー室前のロビーが溢れ返るほどの人が押し掛けた。その中で、イタリア・シチリアの町で7つの名前を持つ〝自由猫〟ドメニコの話が面白かった。

 彼には2年前に下見に来た時に出会っており、「もういないかな」と半分あきらめていた。「マルコ」とか「トム」など、場所によって呼び名が違うので探すのに苦労したが健在で、岩合さんをじっと見つめて「どこかで会ったな」という顔をした。

 どこをねぐらにしているかわからないが、朝は魚屋に姿を現し、それから肉屋、そしてクロワッサンをもらいにカフェへ。広場で昼寝した後、その瞬間は撮り逃がしたが、周りの人の話によると、植え込みからスーパージャンプをして鳩を捉まえた。

 さらに後をつけたら、教会に入って行き、懺悔室の前で神父さんに迎えられた。「大事な話かも」と遠慮して庭で待っていると、間もなく出てきたドメニコは大変すっきりした顔をしていた。丁度その場面が先日、NHKのBSプレミアムに登場。黒毛がふさふさして、堂々とした歩きぶりだった。

 イタリアで野良猫のことを自由猫と呼ぶのは、彼らへの憧憬も込められているのだろうか。(E)

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