笑いの力

2018.09.02
丹波春秋未―コラム

 全国選手権に出場した篠山鳳鳴高校の軟式野球部は、「必勝」ならぬ「必笑」をチームのテーマとして掲げた。試合を取材した記者によると、試合中も敗れた後も笑顔を見せていたらしい。選手らの大先輩にあたる心理学者の河合隼雄氏は、さぞやあの世で得心されていることだろう。

 ダジャレや冗談を言うのが得意だった河合氏は、子どもの頃からその才能を見せていた。戦前の時代。厳粛であるよう求められる式でも、冗談を言って友達を笑わせた。もちろん怒られた。

 子ども時代、よく怒られたという河合氏。「怒られたほとんどは、笑って怒られたか、笑わせて怒られたか」だった。それでこんな格言を生み出した。「笑いの門にフグ来る」。笑うと福ではなく、フグの毒に当たるというわけ。怒られても笑いに転化した。

 河合氏は言う。「ストレスは笑いによって解消される」。人にはさまざまなストレスがかかる。しかし、人には生まれつきストレスを解消する自然の力が備わっている。それが笑いだという。軟式野球の試合では緊張や不安などさまざまな心理的負荷がかかることだろう。その負荷を部員たちは「必笑」で解消したのではないか。

 河合氏の以上の話は、著書から採った。書名は『笑いの力』。笑いには力があることを、河合氏の後輩たちが示した。(Y)

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