夙の墓参り

2018.09.27
記者ノート

 篠山市味間南の集落東部に江戸後期まで存在したとされる村「夙」。その村の人々の墓を今も守り続けている味間南住民の存在を知り、取材した。毎年、秋分の日に住民有志が森の中にある夙村跡へと出向き、墓参りをされている。今年も僧侶をはじめ住民約30人が集まり、30基ほどの墓石や石仏が並ぶ墓前で法要が営まれた。スギやヒノキが林立する薄暗い森の中に響き渡る読経と、木立にたなびく線香の煙。当時の夙の暮らしを想像しながら、目の前の情景を眺めていると、異世界へ迷い込んだような不思議な感覚にとらわれたが、近くの小学校で催されていた運動会の歓声が耳に届き、はっと我に返った。

 墓参りを始めたのは100年以上も前のこと。明治の中―後期、味間南では大火が続き、人々はその原因を「夙の人々の霊を放置しているからだ」とうわさした。事のおこりは「たたりを恐れて」のようだ。現在では、そのようなことを真剣に思ってお参りしている住民はおられないと思うが、かつての隣人に思いを馳せ、年中行事として脈々と引き継がれていることに感銘を受けた。(太治庄三)

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