市が「意思決定」後、住民投票署名1万人超 市名変更論争振り返る(下)


1万筆を超える署名を集め、市名を巡る住民投票を市長に請求する「市名の名付け親になろう会」=兵庫県篠山市北新町で

 2018年4月、兵庫県篠山市は、「丹波篠山市」に変更した場合の経済波及効果額を発表。観光客数の上昇などで純粋な経済効果額を約28億7600万円としたほか、今後10年間で特産物に付随する「丹波篠山」というブランドが失われると仮定した場合の経済的損失額は約23億3000万円で、市名変更によって損失を抑制できるとし、2つの合計で52億円超の効果が出るとした。

議会調査では企業7割「負担」

 一方、5月には篠山市議会の「市名変更並びに地域ブランド振興調査特別委員会」の3つの小委員会が最終報告。第1小委員会は、企業や市民に行ったアンケートから、「『負担に感じる』と答えた割合が市民の57%、企業で77%となり、多くの市民、企業が負担感を持っている」と指摘した。

 また、市名を変えたとしても丹波市や京都府京丹波町が存在することから、「市名変更で誤認の解消、範囲の特定にまでは至らない」と結んだ。

 しかし、最終報告に議会としての賛否は盛り込まれず、いまだ、態度を明らかにしていない議員も多い。また、08年からの第一次市名論争時に「反対」の立場を取った議員が今回は「賛成」しているケースもあり、前回とは心境、情勢に変化があるようだ。

条例の規定超える署名集まる

 そのような中、子育て世代を中心につくる団体「篠山を元気にする会」が市議会に対して住民投票の実施を求める請願書を提出。7月の本会議で採決が取られ、賛成8議員、反対9議員で不採択となった。

 この不採択が結果として住民投票を求める人々に行動を起こさせる。

 同月、住民団体「市名の名付け親になろう会」が発足。「市名は市長と議会だけでなく、市民が決めるべき」として、市住民投票条例に則り、住民からの住民投票の実施請求に必要な署名活動をスタートさせると表明した。

 一方、8月に入り、市は、経済効果やこれまでの議論をへて、「2019年の元号変更のタイミングに合わせて、市名を変更すると意思決定した」と表明した。

 直後に同会が署名活動をスタート。9月には1カ月かけて1万筆を超える署名を集め、市選挙管理委員会に提出し、10月には条例で規定される有効署名数(有権者の5分の1、7066人)を大幅に超える1万271筆で確定したことから、酒井市長に対して、住民投票の実施を請求した。

市名変更にかかわる主な動き

「信問いたい」市長が辞職

 市として意思決定した後の署名開始と多くの署名数を受けた酒井市長は、「意思決定した責任がある。市民に信を問いたい」と市長の職を辞して出直し選挙に臨むと表明。住民投票は投票率が50%を超えないと開票もされないため、「市長選を同時に行い、対立候補と議論することで、住民投票の投票率向上も期待できる」と訴えた。

 その後、市議会副議長の奥土居帥心氏が出馬を表明し、選挙戦になることが確実となっている。

 こうして、市名をテーマにした初の住民投票と、市長選挙という全国的に見ても珍しい同日選が実施されることになった。