「もののあはれ」


 本願寺文化興隆財団の文学賞「親鸞賞」に、諸田玲子さんの「今ひとたびの、和泉式部」が選ばれ、記念シンポジウムを聴講。

 先頃、フランス語で現地のテレビに出演した大谷暢順理事長による「釈迦の『一切皆苦』を『もののあはれ』に止揚したのが日本のこころ。苦しみの中に救いを見出すことだ」との基調講演をもとに、諸田さんと選考委員の加賀乙彦、中西進、沼野充義各氏が話し合った。

 彼女は「和泉式部は〝恋多き女〟と非難されるが、『冥きより冥き道にぞ入りぬべき遥かに照らせ山の端の月』と歌ったように生涯孤独な人。歌こそが『山の端の月』だった。私も母を亡くし落ち込んでいた時、式部に元気をもらった」と執筆の動機を述べた。

 「平安時代は生と死が紙一重で隣り合わせ。死と切り離せないのが『もののあはれ』であり、消えていくからこそ一瞬のきらめきを大事にするのが日本人」とも。3氏は「和歌(短歌)は千年以上続く、稀有な文学。しかし同時に、日本文化は外国との交流の中で培われ、外国と相通じるものを含んでいる。伝統は大事だが、これを世界に伝えていく努力が必要」などと話し、諸田さんも「ノーベル賞をめざします」と笑いながら受けた。

 地球上がぎすぎすしてきた今、確かに「もののあはれ」が広まってほしい。(E)