オーディオ・メーカー

2018.12.13
丹波春秋

 カーナビ大手のパイオニアが香港の投資ファンドに1000億円で買収され、上場廃止の見込みという。日産や中国フアウェイ(華為)のビッグ
・ニュースの陰で、感慨を覚える人は少なくなかろう。

 かつては憧れのオーディオ・メーカーだった。筆者が50年前、冬のボーナスを全部はたいてステレオ装置を手に入れた時の感激は、その時一緒に買ったレコード曲を聴くたびに蘇ってくる。

 1980年代頃まで、人々は応接間にスピーカーをでんと据えて喜んでいたが、やがてウォークマンの普及で装置は不要となり、スマホが出回る今日ではCDを買うことさえ控えられている。

 かつての〝オーディオ御三家〟のうち、山水電気は破産し、トリオ(ケンウッド)も日本ビクターと統合しリストラを繰り返してカーエレクトロニクスで息をつないでいるが、「トリオ」ブランドは消滅。パイオニアもカーナビで業績を伸ばした時期が過ぎ、自動車関連技術がめざましく進展する中で経営危機に陥った。

 〝ものづくり〟で日本のメーカーは世界に伍してきたが、急激なデジタル化、AI(人工知能)化に伴い、技術、生産は無論のこと、販売、物流、マーケティング(市場動向調査)などあらゆる面にアンテナを伸ばさないと生き延びられない。大変な時代になった。(E)

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