伝統食・とふめしの「結良里」閉店 入店建物建替で区切り

2018.12.05
ニュース丹波篠山市地域

最後の営業日に訪れた客と談笑する森本さん=篠山市大山新で

兵庫県篠山市大山地区の伝統食「とふめし」で地域活性化に取り組んでいこうと地元の女性たちで旗揚げした「コミュニティキッチン結良里(ゆらり)」(同市大山新、11人)が11月29日、惜しまれつつ13年間の営業に幕を下ろした。店が入っている建物が「大山コミュニティ消防センター(仮称)」に建て替わることが理由。スタッフの森本恵美子さん(70)=同市長安寺=は、「いったん区切りをつけるという気持ち。代表だった森本淑子さん(10月に逝去)の遺志同様、私たちも『とふめし』を次代につないでいかなくては、という思いは強く持ち続けている。機会があれば活動を再開したい」と話している。

営業最終日の29日の昼時には約20人の来客があり、とふめしのレトルトパックの購入予約も約100袋舞い込むなど、この日厨房に立った森本さんと中澤民子さん(70)=同市一印谷=の2人はてんてこ舞い。「今日で最後」という感傷に浸っている時間などない様子だった。

食堂・喫茶の運営や弁当の製造・配達、レシピの開発、料理教室の講師など、「とふめし」を中心とした地域の伝承料理の発信に関する取り組みを多岐にわたって手掛けてきた「結良里」のスタッフたち。料理講習会を受講し、結良里のスタッフから郷土料理を教わったという中西詩織さん(28)=同市河原町=は、閉店を惜しみ、家族ら3人を伴って来店。注文した「ゆらり定食」(700円)を見つめながら、「結良里はほっこりとした気持ちになれる憩いの場所。地域からこういう雰囲気の空間がなくなってしまうのは、とてもさみしいこと。残念です」と口にしていた。

前身は2000年、デイサービスセンターへ弁当を作って届ける有志の活動から始まった。05年、「くつろげるコミュニティ空間をつくろう」と、大山郷づくり協議会が中心となって意見をまとめ、同協議会メンバーだった故・森本淑子さんが提案した「とふめしで地域おこしを」が採択された。県民交流広場事業の助成を得て、JA合併で空いた施設を改修。食品の製造と販売ができる設備を整え、結良里の活動がスタートした。

週4日営業。1日に米10升を炊くこともあったといい、スタッフも25人を数え、シフトを組んで切り盛りした。12年には、「とふめし」を商標登録し、2合分の「とふめし」が作れる具材が入ったレトルトパックも開発。郵便局とタッグを組み、「ふるさとの味」を全国へ発信した。

 

◆とふめし

最後となった「ゆらり定食」

木綿豆腐をゆでてつぶし、ゴボウやニンジン、油揚げを刻んだものに、サバの水煮を隠し味として加えて醤油で炒めたものを具材にした混ぜご飯。大山地区の3集落(長安寺、町ノ田、大山新)に約120年前から伝わる郷土料理で、古くは灘の酒蔵へ出稼ぎに行く丹波杜氏が携行したり、長安寺の「講」の際に振る舞われてきた。「人の集まるところにとふめしあり」と言われるほど、今でも運動会や冠婚葬祭などでは必ず登場するという。小学校の給食の献立にもなっている。

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