2000度耐えたカプセル帰還 宇宙から物資回収ミッションに成功 開発チーム長・田邊さん/兵庫・丹波市


写真・公開された小型回収カプセル本体など(宇宙航空研究開発機構提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が11月11日に成功させた、国際宇宙ステーション(ISS)から実験試料を入れて放出した小型回収カプセルを、太平洋の南鳥島近海に着水させたミッションにおいて、兵庫県丹波市出身の田邊宏太さん(47)が、カプセル開発チーム長として指揮をとった。大気圏再突入時の高温環境から機体を守り、ISSからの実験サンプルを回収する日本独自の技術を手に入れたことになる。田邊さんは、「プレッシャーが大きく、ほっとしたのが正直な感想。長年、チームメンバーや開発メーカーの努力を間近で見ていたので、それが報われて本当にうれしい。感謝の気持ちでいっぱい」と話している。

 

国際宇宙ステーションから回収「うまくいった」

写真・筑波宇宙センターで試料コンテナを積んだ輸送車両の到着を待ち受ける田邊さん(中央)(宇宙航空研究開発機構提供)

 これまで、無人輸送機(HTV)「こうのとり」に日常品や実験装置などの物資を搭載してISSに届けることはできたが、ISSから物資を回収することはできなかった。

 カプセルは大気圏再突入の際の高温に耐える設計で、直径約84センチ、高さ約66センチの末広がりをした円筒形。重さは約200キロ。大気圏再突入時の表面温度は最高2000度に達するという。

 今回のミッションは、「こうのとり」7号機にカプセルを搭載。ISS船内で実験試料(宇宙で結晶化させたタンパク質)を詰めたカプセルを再び「こうのとり」に搭載してISSから分離し、大気圏再突入時にカプセルを放出、パラシュートで海上に着水し、回収する流れ。

 カプセルは9月にISSへ運び、試料を入れて、11月8日にISSから離脱、同11日に船で回収された。田邊さんはその際、JAXAの筑波宇宙センター(茨城県つくば市)で、カプセルの飛行状態の把握や着水後の航空機による捜索、回収作業を指揮した。その後、回収したカプセルの技術実証が行われ、JAXAは「全体にとてもうまくいった」との見解を示した。

 

日本の独自技術実証「米や露に頼らなくてよい」

 研究が本格化したのは5年ほど前。田邊さんは2016年10月、同チーム長に就任。カプセル開発の責任者で、スケジュールやコストなどの厳しい制約がある中で、チームをまとめ、技術開発に努めた。

 「今回は『こうのとり』7号機の打ち上げに間に合わせなくてはならず、特にスケジュール管理が大変だった。通常のロケットや人工衛星と異なり、JAXAとしての経験が十分にない中、どのように設計、検証を進めればよいか悩んだ場面が多くあった」と振り返る。また、カプセルは、ISS船内に持ち込むため、安全性を保障するのも難しかった点の一つという。

 今回のミッション成功を受け、「日本が独自にISSからの物資回収を実証したことの意義は大きい。アメリカやロシアに頼ってきたことを日本が独自にできるようになれば、日本の研究者に対する利便性が高まる。今後も実績を積み上げていくことで、宇宙利用の活性化が期待できる」と話す。

 

「こうのとり」の開発運用にも携わる

 田邊さんは2004年から、ISSに搭載されるHTVとの通信装置の開発から関わった。09年のHTV1号機の運用時には、管制チームを統括するフライトディレクター(主任開発員)の1人を務め、ISSとの結合に成功。「新幹線が2台並走している状態で、窓を開けて握手するようなもの」(田邊さん)と表現する、非常に高い技術獲得に尽力した。11年の2号機の運用事業では、運用チームの全体責任者として指揮をとり、東日本大地震の影響で、管制システムの米国との通信回線が切れるアクシデントも乗り切った。

 田邊さんは、「『こうのとり』の開発・運用と、今回のカプセル帰還という宇宙開発の節目に関わってこられた。今後は、飛行実験を積み上げて信頼性を高め、その先には日本版の有人宇宙船の開発につながっていけば」と話している。