我ら同じ地球人


 「ぬけまいる」(朝井まかて)は昨秋、NHKの土曜連続ドラマにもなった時代小説。30路にさしかかった江戸の女性、以乃、志花、蝶の3人がそれぞれ家庭も仕事も放り出して一緒に伊勢へ旅立つ。良い男に惚れたり、小娘達に騙されて仕返ししたり、博打場に入ったりのドタバタ道中だが、ともさかりえ演じる以乃らの男勝りの度胸と気っ風が心地よい。

 「ぬけまいり」、別名「お蔭参り」とは、親や村役人に断りなく集団で伊勢参りに出かけた流行現象で、半ば公然化されていた。突発的に行動に出た以乃達も、ぬけまいりの旅なのだが、通行手形を持っていないので厄介だった。江戸から出る“出女”を特に厳重に警戒する箱根の関を、手に入れた急ごしらえの偽手形で通り抜ける場面はスリル満点。

 このドラマに限らず、時代小説には関所越えの話がよく登場するが、たった150年前まで我々の先祖は随分狭苦しい世界に閉じ込められていたものと、いつも思う。しかし、後々の子孫からは、パスポート必携の今の時代が馬鹿げて見えるに違いない。

 北米大陸では長大な壁をめぐっての騒ぎ。欧州では折角進んできた国境の取り払いがまたあと戻りする気配だ。「我ら同じ地球人」という認識が深まるまでには、気候変動などの危機を前にしても、まだあと幾十、幾百年?(E)