里の文化

2019.01.27
丹波春秋未―コラム

 最近出会った二人の女子中学生が、餅まきの話をしてくれた。あちらこちらで催される餅まきに二人とも嬉々として出かけているという。「でも、おばあちゃんがすごい。ヘルメットをかぶっているおばあちゃんもいます」と、笑う中学生の表情がまぶしかった。

 二人は、地域のお祭りなどの行事にも勇んで参加しているという。明るく健康的な中学生たちだった。「里の文化」がこの子たちを育てていると感じた。

 子どもは、家庭や学校だけで育つのではない。地域でも育つ。子どもを育てる地域力の一つが里の文化であり、里の文化に親しむことを通して風土に結びついた自我を形成する。

 但馬の教育者、東井義雄氏は昭和30年代に「村を捨てる学力、村を育てる学力」という概念を提唱した。いわゆる勉強の学力だけを伸ばして村を捨ててしまうような教育ではいけない。自らの共同体を守り、共同体を豊かにするような学力を培わないといけないとした。

 東井氏の教え子の多くは村を離れていったが、決して村を忘れることのない人物を育てたと高く評価されているという。餅まきが楽しいと言った中学生もやがて丹波を離れるかもしれない。しかし、村のおばあちゃんと餅を取り合った記憶は消えることがなく、ふるさととの絆を持ち続けるに違いない。(Y)

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