その名は「鬼坂」…小さな峠の謎 古墳、城の鬼門?キツネに化かされた?

2019.02.08
ニュース丹波篠山市

「鬼坂」と呼ばれる細い峠道(画像の一部を加工しています)=兵庫県篠山市垂水で

兵庫県篠山市垂水(たるみ)と県守(あがたもり)の境に「鬼坂(おにさか)」と呼ばれる細い峠道がある。頂上付近には苔むした石積みがあり、道の両側にはお地蔵さん。竹や木で覆われた薄暗い古道は、まさに鬼が出そうな雰囲気が漂い、茂みの中から村人のこんな声さえ、聞こえてきそうだ。「鬼が出たぞー」。明日3日は節分の日。

地域の歴史に詳しい地元の奥田伊三夫さん(80)=同市垂水=によると、鬼坂は、県守にあり、皇族の丹波道主命(たんばみちぬしのみこと)が被葬者と伝わる「雲部車塚古墳」や、少し離れた場所にあり、戦国時代に明智光秀を苦しめた武将、波多野秀治の居城「八上城」から見ると鬼門の方向。「鬼門の坂」から転じたのではないかという。

また、その昔、追いはぎが出たという話を言い伝えとして聞いたことがあると言い、篠山市の民話にもなっている。奥田さんは、「この坂を下っていると、知らない間に田んぼの中を歩いていた。キツネにだまされた―という話も聞いたことがある。昔の人は鬼が出たとか、キツネが出たとか、おもしろおかしく物語にしたのではないか」と笑う。

奥田さんの調べでは、現在の道よりもさらに上を通る里道があったといい、「篠山の民話集」には、「弘化3年(1846)に今のような道につくりなおされた」との記述もある。

軽自動車1台が通るのがやっとの幅員だが、立派な県道。25年ほど前、奥田さんが自治会長をしていた時、この峠に通じる道が狭く、自動車がよく脱輪したので、県に舗装工事を陳情したという。

奥田さんは、「坂道を下った県守側に小さな神社があり、そこで相撲大会や盆踊りが行われていた。鬼坂を通って遊びに行った記憶があるが、石積みはもっときれいだった」と記憶をたどる。

今もこの坂道をウォーキングコースに入れている人もいるという。鬼にはご用心―。

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