名庭、市民の力で修復完了 重森三玲作「住之江の庭」 白波鮮やかに

2019.03.02
ニュース丹波篠山市地域

修復が完了した「住之江の庭」を眺めるワークショップ参加者たち=兵庫県篠山市川原で

兵庫県篠山市川原の住吉神社境内にある、世界的に著名な作庭家で日本庭園研究の権威、重森三玲氏が手掛けた「住之江の庭」の修復がこのほど、完了した。地元住民をはじめ、市内外の関心のある人たちに参加してもらうワークショップ形式で行われ、今年1月19日から週末ごとに作業し、10回のワークショップに延べ約150人が参加した。1966年(昭和41)の作庭以来、初めての大規模修復という。地元住民や同神社氏子らでつくる市西京街道拠点形成協議会(土井忍会長)の主催。

同庭は、重森自身が「住吉神社が海神であることから、海景や波打つ景観がテーマ」と語り、専門家からも「昭和時代の枯山水庭園としては屈指の名園」と評されている。白い曲線は荒波を、白砂の砂紋は小波を表現している。

ワークショップは、地元の森田一さん(一級造園技能士)と、小山雅充さん(同)が指導。白川砂の運び出しや洗浄、竹の切り出しと竹垣の修理、曲線波型の補修や苔の補充などを行った。

最終日には参加者ら約30人が参加。枯山水の波紋づくりの講習を行ったり、完成披露会が行われ、参加者らは自分たちの手で修復した庭を、目を輝かせながら眺めていた。高槻市から参加した西海佐二さん(60)は、丹波市にある母親の実家を修復しようと土壁の勉強をしている中で、このワークショップを知った。「少しずつ庭の表情が変わっていく様子を見ることができ、参加してよかったと思った。白川砂を洗う作業は大変だったけれど、新しい真っ白なものを入れるより、もともとあったものを使う方がしっくりきますね」と話していた。

土井会長は、「みなさんの力が、まさに波のように押し寄せてきた。今後は福住の名所の一つとして氏子のみなさんで活用してもらえれば」と期待していた。

同協議会は、文化庁の観光拠点形成重点支援事業の採択を受け、昨年度から3カ年で同庭を観光資源として再生するなどの事業に取り組んでいる。新年度は同神社前庭の修復を予定。

重森三玲(しげもり・みれい) 1896年(明治29)、岡山県生まれ。生け花、茶道、庭園の研究を志す。1932年(昭和7)、京都林泉協会を設立。39年に作庭した「東福寺八相の庭」が高く評価され、以来、日本各地の寺社や個人邸で作庭。日本全国の庭園を実測調査した「日本庭園史図鑑」(全26巻)などを発表。75年没。

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