国重文の寺、コスプレイヤーの聖地に 「本物の空間」人気呼ぶ

2019.03.01
ニュース丹波篠山市地域

コスプレイヤーの聖地として人気を博している大国寺の酒井住職と、撮影を楽しもうと来寺したコスプレイヤー。背後にあるのが国重文の本堂=兵庫県篠山市味間奥で

兵庫県篠山市味間奥の古刹・大国寺がコスプレイヤーの聖地として人気を博している。国指定重要文化財の本堂や仏像を有する格式高い寺院でありながら、アニメやゲームの登場人物になりきるコスプレを楽しむ人たちに、寺の境内を撮影の場として開放。県内陸部にあり、決して交通の便が良い場所ではないにもかかわらず、「造り物のセットではない本物の空間で写真が撮れる」としてにぎわいを見せている。

スモークマシンにライトアップも

室町時代初期に建てられた、唐様と和様の折衷様式の本堂の廊下で、漫画やアニメのワンシーンを再現してポーズを決めるコスプレイヤーたち。境内奥の森の中では、血のりメイクに刀を構えたコスプレイヤーたちが戦闘シーンの撮影の真っただ中で、赤い鳥居が建つ薬師稲荷社では巫女の衣装をまとう女性がしっとりとたたずんでいる。静かな山寺に、ポーズを指示するカメラマンの声とシャッター音が響き、フラッシュの閃光が走る。

現在、1日20人限定で受け入れ、午前10時から午後9時半まで開場(有料)。昨年は1年間で650人のコスプレイヤーが来寺し、境内の紅葉が美しい11月には約180人が撮影を楽しんだ。暑くて虫が多い夏と、寒さが厳しい冬は利用者が減るという。

コスプレイヤーのほとんどが20―30歳代の女性で、大阪を中心に関西一円からやって来ており、遠くは北海道や四国から、さらには、香港や韓国、ニュージーランドなど海外からの利用者もしばしばあるという。

「最高の一枚を撮って帰ってもらいたい」と、コスプレイヤー専用の着替え棟を完備し、雲海や霧などの演出に用いるスモークマシンも貸し出しているほか、夜間は通年、ライトアップも行っている。

寺「新たな世代との交流に」

コスプレイヤーの受け入れは2010年からスタート

撮影地として開放する事業を始めたのは2010年。当初は、「一般参拝者や地元の方々から『えっ、あの人たち何』と怪しまれたり、私自身もコスプレイヤーさんたちのいでたちに正直びっくりしました」と振り返る同寺の住職、酒井裕圓さん(54)。「今では認知され、『きょうはコスプレの人たち来てないの』と楽しみにされている人までいますよ。私もずいぶんコスプレやアニメに詳しくなりました」と笑う。

企業の広告映像や音楽バンドなどのプロモーションビデオの撮影などを手掛ける企画会社の社長から同事業を持ち掛けられたのが始まり。同社と連携して「歴史空間 大国寺」と銘打ち、ネットなどでプロモーションをかけたところ大きな反響を呼んだ。

酒井住職は「宗教離れの昨今、きっかけはどうあれ、若い人たちが仏教にふれ、親しんでもらう機会になれば。新たな世代との交流を通して寺や地域に活気が生まれたら」と期待している。

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