子育て世代“就活”の実態 高い求人倍率も「子の預け先」「求人内容」不安 企業改革が急務

2019.03.29
ニュース丹波市地域

「仕事と子育てサポート企業面接会」でエントリーする参加者ら=兵庫県丹波市春日町黒井で

時代の変化により、子育て中の求職者が増えている。兵庫県丹波市の場合、市や同市柏原町のハローワーク柏原が、子育て世代にターゲットを絞った面接会の開催や求人情報の提供に力を入れている。高い有効求人倍率に表れている「人手不足」が背景にあり、子育て世代にほしい情報を届けることで、求職者と求人企業のマッチングを促すねらいがある。同県の丹波地域(丹波市、篠山市)の子育て世代の就職をめぐる状況を取材した。

 

有効求人倍率1・95倍、人手不足の状況

丹波地域の有効求人倍率は、3年以上にわたって上がり続けている。今年1月の同倍率は1・95倍。求職者1人に対し、倍近い求人があるということになり、人手不足の状況だ。

ハローワーク柏原は今年1月から、子育て世代の勤務に配慮がある丹波市内の求人をまとめた「子育てしながら働きやすい求人情報」を発行。各子育て支援センターにも置いている。反応はまだ少ないが、同ハローワークの大川康憲雇用指導官は「今すぐでなくても、将来的に就職を考えている人にも利用してもらえれば」と話す。

「子育てしながら働きやすい求人」とは、▽子どもの学校行事や発熱などで休むことに配慮がある▽夫の扶養範囲での就労ができる―などが主な内容という。こうした条件は、求人を受け付けた際、企業の担当者に直接尋ねているという。ただ、こうした条件のある求人は正社員以外である場合が多く、子育て世代の就業に関しては、求職者も求人企業も正社員以外での雇用を求める場合が多いという。

 

子育て世代への配慮、人口減時代のカギ?

「仕事と子育てサポート企業就職面接会」が、2月22日に同市内で行われた。丹波市と兵庫労働局、ハローワーク柏原などの主催で、今年度2回目。丹波市内に就業場所がある求人企業8社と、19人が参加した。主な求職者の年齢層を分けた企業面接会は3年前から行っており、子育て世代は、若者、シニアの各層と比較して参加者が多いという。

子育てへの配慮を条件にしている面接会では、求職者と企業の話もスムーズにいきやすい面があるようだ。

1歳の娘が4月から保育園に入るため、介護施設の面接会に来ていた女性(35)は、「独身時代のように土日勤務はできないと考えていたが、調整がつけば希望に沿えると言われた。来てよかった」と話した。また、9歳と2歳の子どもがいる女性(40)は、「夫の扶養の範囲で働けること、学校行事などで休みが取りやすい所を探していた。条件が合うところが家の近くにあったので、来週さっそく工場見学に行く」と前向きな様子だった。

この日の面接会に最も多くの求人を出していた社会医療法人社団正峰会(本部・同県西脇市)。新施設オープンに向けての求人という。8年前、運営する病院を拡大する際、スタッフ確保の難しさを見越し、常勤を1人確保するのではなく、0・3人分のスタッフを3人確保する方針に転換した。時間枠を多く設け、働く人の希望に合わせてシフトを組んでいる。

また、病院の強みを活かし、法人内に病児保育を行う保育園を設置。面接会では参加者から「子ども2人のうち1人が病気になった場合、2人とも預かってもらうことはできるか」などの質問があったという。

同法人人事部の男性は「どうしたら働いてもらえるかを考えないと、人口減の時代の変化についていけない。これからさらに大変になる」と、人材確保に向けてこれからも制度を見直していく考えだ。

ハローワーク柏原の小林孝至所長は「働き方改革の動きもあり、子育て中の求職者にとっては今が“チャンス”といえる。来てほしい人材なら、条件を整備してもらえるのでは」と話す。

 

子の受け皿なしに「働けない」

しかし一方、市内の子育てセンターのスタッフからは「就職面接会の開催時期がニーズとずれている」という声も。「仕事が決まっても、子どもを預ける所がないと働けない」と指摘する。

丹波市子育て支援課によると、市内こども園の来年度の0歳児クラスは空きがない状況で、途中入園はほぼできない。その他の年齢も「入れるところが何園かはある」状況で、昨年秋の申し込みが受け付けられていなければ、希望する園への急な入園は難しい。

ある子育てセンタースタッフは「子ども園に入れなかったので、就職をあきらめたお母さんもいる。まずは子どもの受け皿がないと仕事を探すのは難しい」と話す。

また、子育て中の求職者の思いと、求人内容が一致しないケースもある。6歳と4歳の子どもをもつ女性(36)は、「午前7時から午後6時ごろまでの間の3時間程度」というあるこども園職員の求人を見て、「午前中だけ働けるなら」と応募したという。しかし、実際に面接に行くと、「本当は朝7時からの早い時間と、夕方遅い時間に来られる人を探している」と言われ、結局、断った。

この女性は「子どもが小学生になれば、夏休みはどうするかという問題も出てくる。子どもがいると、毎日急に何が起こるか分からない。途中で帰ったり、遅れて出勤したりしても理解がある職場なら働きやすいと思う。そんな会社が増えれば」と話していた。

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