アメリカ人女性が醸す日本酒 歴史ある酒蔵で新ブランド立ち上げ

2019.05.09
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105年ぶりの新ブランド「倭丹波」の立ち上げに携わったケリーさん。社内では「筋肉担当」=兵庫県丹波市市島町中竹田で

創業170年を迎える兵庫県丹波市市島町中竹田の西山酒造場(西山周三社長)が新元号になった5月1日、元ALT(外国語指導助手)の経歴をもつアメリカ人社員のケリー・カミンスキーさん(28)が中心となって新ブランド「倭丹波(やまとたんば)」を立ち上げた。同社の第一ブランド「小鼓(こつづみ)」は、俳句に造詣が深かった同社三代目・西山泊雲と交流があった俳人・高浜虚子が命名。以来、105年ぶりの新ブランドの展開。「小鼓とは違うお酒」をテーマにしており、ケリーさんは「『こんなお酒が造りたい』と思い描いていたものが、その通りに表現できた自信作です」と話している。

 

筋トレが趣味「私は筋肉担当」

ケリーさんはフロリダ州出身。高校時代、授業で外国語の履修が義務付けられており、あえてなじみのない日本語を選択した。「難しいことにチャレンジするのが好き。漢字もかっこいいと思っていた」と笑う。日本にホームステイした際には、日本人の優しさや、おもてなしの精神に魅せられたという。

大学卒業後、母国でバーテンダーの仕事に就いたものの、「日本が恋しくなった」と言い、ALT募集のプログラムに応募。数年間、京都市の高校などで勤務した。

次なる道を模索し、キャリアフェアに参加したとき、外国語指導の募集がほとんどだった中、西山酒造場の求人があった。バーテンダー時代に地ビールをつくってみたいと思っていたこともあり、2017年に酒造りの世界に飛び込んだ。

初めは専門用語がわからなかったが、それでも社員との会話は日本語で行っている。「最近は逆に英語が難しくなって」と笑顔。体を鍛えることが好きなため、社内では「筋肉担当」と呼ばれて輪の中心にいる。「最近は忙しくてトレーニングできていないけど、トレーニングした日は1日6食食べます」とほほえむ。

 

「酒造りに新しい風を」と抜擢

同酒造場では、これまでの伝統を引き継ぐとともに、新しい展開に挑戦しようと、数年前から第二ブランド立ち上げを検討。酒造りに新しい視点を取り入れるべく、ケリーさんに白羽の矢が立った。普段は営業活動をメーンにしているが、製造の企画にも携わっていることから抜擢されたという。昨年末から、杜氏の八島公玲(こうれい)さんとタッグを組み、酵母の選定を含む新商品開発の一切を任された。

「倭丹波」ブランドで2商品を開発。酒米・兵庫北錦を使い、フルーティーな香りの純米大吟醸酒「山波(やまなみ)」と、酒米・五百万石を使用し、すっきりとした酸味が特徴の純米大吟醸酒「叢林(そうりん)」の販売を始めた。ケリーさんによると、2商品ともに同社ではこれまで使用したことがない酵母を使っており、酒米との相性などを考慮しながら試行錯誤したという。ケリーさんは「でき上がりに感動した。海外輸出にも力を入れていきたい」と笑顔を見せた。

今後も「倭丹波」ブランドで新商品を展開する計画という。2商品ともに720ミリリットル1944円(税込み)、一升瓶3456円(同)。

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