激務の産科医、休みなし 分娩休止で機能集約を 病院「国レベルの課題」

この記事は約3分で読めます。

ささやま医療センターの産婦人科を案内する院内のパネル。「分娩中止」の岐路に立っている=兵庫県丹波篠山市黒岡で

兵庫県丹波篠山市の兵庫医科大ささやま医療センター(片山覚院長)は5月23日、丹波新聞社の取材に応じ、産婦人科における分娩は中止して、隣接する同県丹波市に近く完成する「県立丹波医療センター」に機能を集約させるものの、産婦人科自体は継続し、従来通り妊婦健診や妊娠中のトラブルについては入院も含めて対応する―との方向性であることを明らかにした。片山院長は、「産科医が全国的に不足する中、より安心・安全な周産期医療を提供するためには、『医療圏』という広域で考えることは大前提で、市の問題ではなく、国レベルの課題」と話している。

分娩を中止しても、産婦人科自体は継続し、受け入れ先となる病院の考え方にもよるが、リスクが高まる分娩直前の9カ月まで診ることは可能という。

ささやま医療センターの産婦人科は医師2人体制で、助産師などのスタッフも「十分でない」状況。一時期、医師1人体制の時代も経験し、長年、献身的に産婦人科を支えてきた池田義和医師が今年3月末で退官。また、医師にも「働き方改革」が求められており、7月には県立丹波医療センターが開院することから、「これを機に、より市民にとって安全・安心な周産期医療をめざし、舵を切りたい」と、市に協議を申し入れる方向。

片山院長によると、リスクを伴う分娩は、24時間対応で、小児科、麻酔科、場合によっては脳外科も必要な領域で、広域(丹波市も含めた丹波医療圏)で整備されるべき医療という。

ささやま医療センターの産婦人科は、医師2人体制は維持しているものの、労働条件は過酷。妊婦の体調の急変に備え、24時間、できるだけ2人で対応できるよう心がけ、また、どちらかの医師が病院にいるか、1時間以内に駆けつけられる範囲に外出を自制している。

田中宏幸部長は敷地内の官舎で寝泊まりし、出張などの際は医大にバックアップを要請する。休日はなく、田中部長は少なくとも、池田医師が退官した4月以降、同県西宮市の自宅で夜を過ごしたことはない。

医師を輩出する兵庫医大においても、産科医を目指す学生は減少傾向といい、「過酷な労働条件が、産科医を敬遠する原因になっている。学生は症例が多く、働き方改革が進んでいるところへ行きたがるし、医大としても現状のささやま医療センターのように、リスクの高い現場に行かせられない」と話す。

片山院長は、「市の分娩数が減っている中、市域における共存という意味では、『地元で産みたい』という人は、幸い市内には産婦人科医院があり、そこを利用してもらえばよい。医療センターでなければならない理由はない」と話す。

ささやま医療センターの「分娩休止を検討」との意向を受け、丹波篠山市の酒井隆明市長は今月20日、同センターの産科充実に向けて市民の意見を聞く検討会を6月にも立ち上げることを表明している。

昨年6月に医科大と結んだ「ささやま医療センターの運営等に関する基本協定書」では、医科大は、同センターにおける婦人科や小児科などの「存続と充実に努める」とし、医療従事者の不足や経営状況などでやむを得ない事情となっても「当該診療科の存続、再開について可能な限り努力する」と明記している。

市は同センターに対し運営補助金として年1億2600万円を交付している。

タイトルとURLをコピーしました