伝統の味、ラブコールで復活 郷土料理の「とふめし」 別施設で定食スタート

2019.07.02
ニュース丹波篠山市地域

「どうぞ、めしあがれー」。「とふめし定食」をPRする結良里の團野代表とメンバーの中澤民子さん、岡田支配人(左から)=2019年6月2日午前11時43分、兵庫県丹波篠山市郡家で

消えかかろうとしていた郷土の味、再び―。兵庫県丹波篠山市の「コミュニティキッチン結良里」が作る同市大山地区の伝統食「とふめし」が県立新たんば荘(同市郡家)のメニューに新しく加わり、今月から「とふめし定食」として販売がスタートした。結良里の店が入っていた施設の取り壊しが決まり、昨年11月、惜しまれつつも13年間の営業に幕を下ろしており、「120年以上前から伝わる郷土料理を絶やしたくないが、さてどうしたものか」と考えていたころ、以前にとふめしを食べ、そのおいしさを知った新たんば荘の岡田光支配人が「うちで作ってみませんか」とラブコールを送り、郷土の味が復活することになった。

とふめしは、木綿豆腐をゆでてつぶし、ゴボウやニンジン、油揚げを細かく刻んだものに、サバの水煮を隠し味として加えて醤油で炒め、それらを白米と混ぜ合わせて作る。大山地区の3集落に120年以上前から伝わる郷土料理で、古くは酒蔵へ出稼ぎに行く丹波杜氏が携行するなどしてきた。今でも「人の集まるところにとふめしあり」と言われるほど、運動会や冠婚葬祭などでは必ず登場する。小学校の給食の献立にもなっている。

郷土料理のとふめし

「とふめし定食」は、月替わりの惣菜に、特製の赤だし、漬物、サラダが付いて800円(税込み)。「伝統の味をたっぷり味わって」と、とふめしのみ、お替り自由という気前の良さを見せている。販売日は、毎週水、日曜日、祝日の午前11時―午後1時まで。

新たんば荘内の談話室だった8畳ほどの部屋に厨房設備を整え、とふめしが作れる調理室に改装した。営業日のたびに結良里のメンバーがとふめしをこしらえ、できたての郷土の味を提供している。

結良里は、とふめしで地域活性化に取り組んでいこうと、地元の女性たちで旗揚げしたグループ。現在、70歳代を中心に9人が所属。2012年には、とふめしを商標登録し、2合分のとふめしが作れる具材が入ったレトルトパックも開発。新たんば荘ではレトルトパックも販売している(750円、税込み)。

岡田支配人は、「開業から31年目に入った新たんば荘。丹波篠山市になったこともあり、何か新しいことをして施設のPRがしたかった。とふめしと共に施設の認知度も高めていけたら」。

結良里の代表、團野通代さんは、「メンバーの高齢化で世代交代という課題があるが、『おいしいかった』のひとことを原動力に頑張っていきたい。残したい大切な郷土料理を味わいに来て」と呼びかけている。

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