大阪大学大学院名誉教授 北村卓さん(丹波篠山市立町)

2019.07.21
たんばのひと

北村卓さん

実家拠点に今後も研究

丹波篠山市で3歳頃まで育ったものの、父の転勤の関係で岡山や富山、大阪などでこれまでの人生の大半を過ごした。大阪大学大学院言語文化研究科などの教授として定年を迎え、このほど両親が終のすみ家に選んだ丹波篠山市の実家に移住した。

高校時代からサルトルやカミュを読み、大阪大学文学部へ進学。フランス文学を専攻し、詩人、シャルル・ボードレールなどの研究に没頭した。

その後、異国や異質な文学における表現や精神性などを比較、分析する「比較文学」の道に入る。「例えばもともと短編作家だった谷崎潤一郎が長編作家になりえたのは、ボードレールの作品の構図を使ったことにあります。谷崎だけでなく、芥川龍之介、永井荷風ら日本の文豪にも影響を与えています」

研究の食指は文学以外にも広がる。現職時代に受け持った講座は、その名も「現代超域文化論」だ。

日本でのフランスのイメージを形成したものの一つに「ベルサイユのばら」を上げ、「宝塚歌劇のベルばらを見ても、舞台と衣装こそフランスですが、歌舞伎のような型、演歌の要素がある歌など中身は日本的。外のものを取り入れて、独自のものをつくり出すハイブリッド式ともいえる日本文化が垣間見える」と話す。

新たな拠点となった実家は城下町の一角。「私の代でこの家を手放すのはしのびなかった。幼いころから何度も来ていたので、愛着もあり、故郷はここだと思っている」とほほ笑む。

今後の目標は、「まずは今の生活に慣れること。時間ができたので、宝塚歌劇のことを本にしたいと思っています」。65歳。

関連記事